他の方のブログで
「ブルガダ症候群の禁忌薬について病院が説明してくれない」
と書いている方がいました。
私も説明されてませんでした。
調べてみました。
私の結論
患者本人としては、気にしなくてよい
気をつけるのはアルコールの過剰摂取だけ。
理由を挙げていきます。
最新のガイドラインで注意喚起がない。
不整脈全体のガイドライン
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2024/03/JCS2024_Iwasaki.pdf
遺伝性不整脈のガイドライン
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2017/12/JCS2017_aonuma_h.pdf
「禁忌薬」としての危険性が明確ならガイドラインに記載されるはずですが、全く触れられてない。
明らかに危険な薬はブルガダ誘発に使われるピルシカイニドなどの不整脈薬だけと思われます。
これらはICD植え込み済の患者においては、かかりつけ病院以外から処方される可能性はほとんどないでしょう。
次に以下のサイトについて書きます。
https://www.brugadadrugs.org/
最初信頼できそうだと思ってましたが、疑問な内容も含まれてました。
禁忌薬をまとめているものがありましたのでリンクを貼ります。
これを調べてみると疑問な内容を含んでました。
https://www.brugadadrugs.org/upload-dir/Drugs%20in%20Brugada%20syndrome%20letter%20JAPANESE.pdf
詳しくは以下の通り。
「出来れば投与を避けたい薬物」のところにアレルギー薬の
テルフェナジン/フェキソフェナジン
が記載されています。これについて私の考えを書きます。
①この2つは心臓に対して全くの別物です。
テルフェナジンはアレルギー薬として販売開始したのち、QT延長という重篤な不整脈の副作用が出て販売中止となりました。
テルフェナジンの構造を変えて心毒性をなくしたのがフェキソフェナジンです。同列に扱うことはできません。(この情報はテルフェナジンで検索したらすぐ見つかりました)。
②次に、テルフェナジンやフェキソフェナジンを根拠とした論文が提示されていたので内容を確認しました。
1)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/internalmedicine/48/12/48_12_1009/_pdf/-char/en
2)
1)において、ヒスタミンH1受容体拮抗薬(アレルギー薬に多い)を飲むとブルガダ症候群に良くないと書いてあります。理由は、上記に該当する4薬剤(ホモクロルシクリジン、フェキソフェナジン、エピナスチン、クロルフェニラミン)を飲んでる53歳男性において、coved型のST上昇が観察され、これがピルシカイニドによって強化された。というもの。
フェキソフェナジンだけがダメとは書いてありません。他の薬との比較した情報なくH1拮抗薬全体で注意すべきとしか書いてないです。
そもそも似た効果の薬を4剤も重ねて使うのは少なくとも日本の医療においては異常です。
そして、たった1例だけの症例報告です。
この症例の患者以外の人でどうなるか分かりません。
2)では、犬の心臓の組織を取り出してブルガダ症候群の男女差を検討しています。その影響を見るための薬剤として、不整脈を起こすことがわかってるテルフェナジンを使ってます。他の薬剤との比較研究ではありません。
したがって1)、2)の情報を根拠として、アレルギー薬のうちフェキソフェナジン(だけ)を注意喚起のリストに載せることには疑問があります。
著者も情報の信頼性(CLASS)を「IIb」としており信頼性が低いからレッドリストに入れてないのでしょうが、与えられた情報からでは「フェキソフェナジン以外のアレルギー薬は大丈夫」と読めてしまいます。
フェキソフェナジン以外の薬については気力が足らず調べてませんが、このような情報の出し方をする資料を信頼できません。少なくともフェキソフェナジンだけをリストに載せるのは違うと思います。
話が飛びますが、レッドリストに麻酔薬のプロポフォールがありますが、私が手術受けるときに使われていたのはプロポフォールでした。
プロポフォールについては、本文中に注意して使えば有用だと記載されていますが、ならば何故レッドリストに載せているのか。。。
CLASS I のものは不整脈薬しか無さそうです。
CLASS IIaのものに抗うつ薬がありますが、抗うつ薬は、風邪薬や、怪我での抗生物質・鎮痛薬などと違い、急ぎその日から飲む必要はほとんどないと思うので、抗うつ薬を飲むと決まってからブルガダ症候群への影響を医師に確認してもらってもよいと思います。
最後に。
どの情報を信じるかは
「かかりつけ医と相談」して「自分で決める」
ことをお勧めします。