犬のハエ咬み行動には、異常も正常もある。 | 渋沢どうぶつ愛護病院のブログ

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犬のハエ咬み行動と聞くと、反射的に焦点性発作を連想していた。イコール神経疾患。それだけでは、短絡的すぎだ。ハエ咬み行動という用語は、病気という異常な状態だけでなく、普通の行動という正常な状態も含んだ概念である。

 

例えば、犬の聴力は、人間の範囲とは異なる。人間には聴こえない音が犬には聴こえて、上の方を見てキョロキョロする。そして、たまたま口を開けて閉じる。あり得る話だ。他にもある。飛蚊症で埃のような形をした物体が視界に動いていて、それを見ている。まだある。胸やけをしていて、気持ちが悪くて、上を向いている。などなど。

 

でも、とりあえず、それを目撃した人間が、その行動をハエ咬み行動だと言っていいのだ。大事なのは、そこからだ。その行動をとるきっかけはあるのか、その行動にどんな意味があるのか。ゼロポジションで、慎重に見極める。焦って、ありもしない病名を付けてしまうことのないようにしないといけない。

 

 

獣医師 渡部伸一