青散る斜陽 | 渋沢どうぶつ愛護病院のブログ

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日々感じたことを、ときどき綴ります。

 

あらゆる物が、暖色の後光を受けながら、一日の終わりを迎える。青がいっそう薄まっていく西の空を目がけて、静かに落ちる夕陽。なんだかわからないけれど、なんとなく哀しい。秋は、こうんなふうにして、赤い悲哀を浴びせてくる。

 

十分な診察や検査をしても、その原因を医学的に説明できない。なんだかわからないけれど、なんとなく体調が悪い。医学領域では、それを「不定愁訴」と呼んだりする。「愁訴」。苦しみや違和感を訴えること。文字通り、心に秋がのしかかる。耐えかねて、体から悲哀があふれ出す。

 

人間以外の動物は、そもそも口で何かを訴えることがない。犬猫なら、飼い主がその代わりをする。動物病院に行って、ペットの症状を訴える。当然、飼い主は当事者ではない。間接的な訴えを聴く方からすれば、それらが「不定愁訴」であることは、割と多い。

 

犬猫が、何をどう感じているかは、一朝一夕にはつかめない。青い光が届かないから夕焼けが赤く見えるのと同じように、彼らの思いもまた、なかなか届かずに、診察室は、もの哀しみの色に照らされる。青が見える地点まで、高みを目指していくしかないか。

 

 

 

 

院長 渡部伸一