氷山が解けるように | 渋沢どうぶつ愛護病院のブログ

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日々感じたことを、ときどき綴ります。

 

気温が高い日は、体を濡らすに限る。仰向けになって、水に浮かぶ。顔だけ水面から出して、足元にある岩場を軽く蹴ってみる。首のあたりに小さな波をつくりながら、すぅっと体が流れる。勢いがなくなって沈みそうになると、体を起こす。すぐまたさっきの場所に戻って、岩場を蹴る。その繰り返し。楽しくてやっているのか、他にやることがないから続けているのか…。

 

こんなことを続けてもう何年になるだろう。地肌が見えるほどに、毛も薄くなってきた。透明な四角い氷が、削られてかき氷へと形を変えた途端に、白に変わる原理のように、透明で中空な毛一本一本が、光を乱反射して、黒い地肌を背景としながら、体をかろうじて白く見せている。

 

白くて図体が大きいから、珍しいのだそうだ。ガラスの向こう側には、右から現れて、少し立ち止まってこっちを見ては、左に消えていく人間たちの姿。そんな光景にもさすがに慣れた。自分のルーツはどうやら北極らしい。氷が解け続けて、仲間たちは苦労しているようだ。それもこの人間のせいと聞いた。

 

日が強い。今日も水に浮かぶルーティーン。岩場に行ったり来たりを何度か繰り返して、ちょっと疲れた。白い体はゆっくり沈む。氷山が解けるように。

 

 

 

 

 

 

院長 渡部伸一