雨と陽をよけて | 渋沢どうぶつ愛護病院のブログ

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日々感じたことを、ときどき綴ります。

 

空に絵の具をべったりと塗りつけたような重たい雲は、にわか雨を予感させる。梅雨明け以降も続く不安定な天候では、犬の散歩に行けたり行けなかったり。飼い主も犬も、表情は曇り顔。

 

感情を顔に出す人間の、顔面の皮下の筋肉を表情筋と言う。しかし、犬の場合は、表情筋とは言わない。それは、犬が笑うことをしないからだ。でも、笑っているように見える顔を犬がすることは、ときどきある。息が上がっている時だ。「口が開いて口角が上がって、舌が出ている状態」。人間は、きっとこの状態を、「笑顔」と解釈している。

 

我が家の犬は、特に自宅で写真を撮ろうと構えると、身を固めて上目遣いになり、途端に顔がこわばる。何かいぶかしく思うのだろう。犬の方も構えてしまうようだ。そのため、家の中では、初めから「笑顔」の写真を撮ることを諦めている。唯一、「笑顔」を見せるのは、散歩のときだけなので、その瞬間を連写して収めている。

 

夏の草木は、盛んに生長し、山々は迫り来るかのように立体感を増す。滴るほどに溢れ返った葉は、強烈な太陽光線と微かな小風を浴びて鮮やかに揺れ、目に飛び込んでくる緑は鮮烈だ。この季節の散歩に適した時間帯は、明け方。ギラギラの太陽が昇り詰める前に、キラキラの「笑顔」を撮りに行こう。

 

 

 

 

院長 渡部伸一