やっぱり一言くらい言っておこうかなと思いまして。青島百八軒です。
市川亀治郎さん、4代目猿之助襲名へ=いとこの香川照之さんは歌舞伎初挑戦。
歌舞伎俳優の市川亀治郎さん(35)が来年四代目市川猿之助を襲名することになったと27日、松竹が発表した。来年6、7月に東京・新橋演舞場で行われる「初代市川猿翁 三代目市川段四郎50回忌追善興行」で襲名披露を行う。亀治郎さんの伯父にあたる当代の猿之助さん(71)は二代目市川猿翁を名乗る。
同興行ではまた、猿之助さんの長男で俳優の香川照之さん(45)が九代目市川中車を襲名し、歌舞伎に初挑戦。香川さんの長男政明さん(7)も五代目市川団子を名乗って初舞台を踏む。
歌舞伎俳優が父なり叔父なりの名前を継ぐことは当たり前のことですが、この襲名はかなり重い襲名になりましたね。
猿之助の先妻の子供、香川照之が梨園に入るということで、ただ亀治郎は猿之助を継ぐだけでなく、新参者の従兄弟とその息子をいっぱしの役者に育てなければならないと。ただ襲名した名跡を磨くというだけのことでは済まされない重い責任をはじめから背負わされてしまう形になってしまいました。
むろん、ある名跡を継げば、後進の指導にかからなければならないという責任はありますが、なかなか襲名してすぐにそういう立場になることはまずはありません。現に襲名して間もなく酒場で殴られて謹慎くらう人もいたりしますから。(笑)
それだけの実力が今の亀治郎にあるのかどうか……。いや、テレビの記者会見を見る限りはその位にあるかどうかよりも亀治郎の覚悟が見えたのが新鮮でしたね。
そして、なによりもテレビの世界からエクスクルーシブな歌舞伎の舞台に飛び込むことを決意した香川照之と息子の政明くん(てゆーか政明くんのほう)に感激。
某ワイドショーである評論家は、27歳まで銀行員だった十代目・市川團十郎を引き合いにだして、その世界の厳しさとこの親子へのエールを語っていましたが、團十郎家の子女と恋愛結婚をきっかけに舞台に入った十代目と違い、香川親子はもともと猿之助家の人間であることの義理のために梨園に入ったわけです。たしかに45歳は遅咲きすぎるかもしれませんが、自分を捨て駒にしてでも息子を猿之助にするのだという意気地には感涙を禁じえません。
確実に自分が見てきた歌舞伎の世界は世代交代をしています。
世代交代をするたびに、やれ「むかしの○代目の芝居のほうがよかった」とか「今の若手は芸が荒い」とか言う古参歌舞伎ヲタ(あえて芝居通と言わずにこう呼ぶ)がいますが、今の歌舞伎を見守ってやろうという空気こそが、これからの歌舞伎をより良いものにしていくのではないでしょうか。なににましてもご贔屓方の温かい視線が大事です。
最後に、ジャズの帝王、マイルス・デイヴィスの言葉で締めます。
人生とは変化であり、挑戦である。 マイルス・デイヴィス