ヒロには随分と年上の友達がいた。

大先輩ではあるのだけど、とても心が近く、まるで友達のように語り合えるという意味で、あえて友達とよんでいる。


つい先日、一緒にごはんを食べたあと並んで日向ぼっこをした。

その時の話がとても印象的だった。


幸さんは昭和17年生まれだった。戦争中で兵士だった父は生まれた時に会ったことがあるらしいが記憶にない。

5人兄弟の末っ子でお母さんは幸さんの出産の後体調が悪く、寝たきりとなった。幸さんは立っているお母さんをみたことがない。

低学年の頃は、友達はお母さんが迎えに来てくれるのに幸さんはいつも自分の足で学校からの遠い道のりを歩いて帰っていた。それでも家に帰ると「寒かったね、寒かったね」と芯から冷たくなった幸さんの手を自分の懐にいれて暖めてくれる優しいお母さんが大好きだった。

しかし時は戦後、生きるのに苦しい時代。兄や姉は栄養失調や病気、事故などで3人も亡くなった。幸さんはギリギリのところで生き延びた。

それからも幸さんの人生には語りつくせないほどの壮絶なドラマがあった。

そんな幸さんの口からいつも出る言葉は「今が一番幸せ」。

それは、今困難がない、ということではない。むしろ歳を重ねて体の不調や痛み、老後のことなど、心配なことを数え上げたらきりがない。

それでも幸さんは迷いなく、今が人生の中で一番幸せだ、という。


私はその秘密を知っている。


それは、幸さんが「幸せを感じることの天才になったから」だということ。

幸せをかぞえあげる天才。


そんな幸さんをみていると、「幸せは、なるものではなく、感じるもの」であることを思い出す。

そして「感謝と幸せはワンセット」だとも。


幸さんに会って、感謝の言葉を聞かなかったことがない。そんな幸さんは、年齢に関係なく友達が多い。

目がどこまでも澄んでキラキラしている。笑顔が底抜けに優しい。

沢山の悲しみを経験されたからこその今の幸さんなんだろう。


ヒロは幸さんといると心がポカポカしてくる。まるで温泉みたいだな、と。

そんな幸さんといて浮かんだイメージが”内側のお風呂”。

感謝の数を数えて過ごす命の使い方っていいなぁと、心から思うヒロなのだった。