15年のセックスレス。

もう、新たな恋が生まれたとしても男性に裸を見せることなんてないと思ってた。

たるんだお腹に、すっかり貧弱になった胸。口臭だって気になる。

至近距離で鏡を見ればツッコミどころだらけ。

万が一、そんな時が訪れたなら、真っ暗闇でしか無理。

 

そんな勝手な妄想もぶっ飛ぶように、勢いよく彼は私に入ってきた。

 

彼との初めての日、正直私は、そこにはいなかった。

頭の中では、恥ずかしさでいっぱいだった。

 

その裸となる日は、突然訪れた。

片隅の片隅の片隅には覚悟はあったけれど、でもまさかね。

 

ラブホについてから「準備が出来てない」って漏れ出た。

「準備なんているの?」とあっさり返ってくる。

 

心のどこかで、まだ主婦心は残っていたのかもしれない。

きっと未だ、私が主婦を過ごした街に、この今の私を知る人はいない。

旧姓で子供の名前のママと呼ばれるだろう。

そして以前と変わらない嘘の笑顔で立ち話をするだろう。

 

ずっと嘘の笑顔で過ごした街。

そんな笑顔が、彼には通じない。

 

私の中にある、時折見せる暗い顔をしつこく言ってきた。

私以上に私を知るまで、私を聴いてきた。

そして一つ一つ暗い思いを解放していった。

 

セックスと同時に。

セックスの回数が私を変えた。

セックスで女性は綺麗になるというけれど、セックスを通して私の暗闇を消してくれた。

それは、今この瞬間感じることを邪魔するこれまで培ってきた雑音を消してくれた。

 

ベッドの上で、そして帰れば反省会じゃないけれど、どんなあなたになりたいか、何度も私の行先を一緒に覗き込んでくれた。

 

彼と出会った当初、これまで食べなくなってた甘いチョコレートやアイスクリームがやめれなくなってた。

 

セックスの最中、アイスクリームが食べたいな。なんて思うほど。

無性に食べたくなるチョコレートは、彼とのお泊まりなんて考えられなかった。

 

でもいつの間にか、お菓子もアイスクリームもあっさり要らない体に戻った。

心と体、そして本当に生きたい道を一緒に見つめてくれることで、魂とも繋がったんだと思う。

その時くらいから、私の中でのエクスタシーも変わった。

 

アラフィフの新たな愛。

驚くことは、心が綺麗になったこと。

出会った瞬間、アラフィフの何の準備のない、何も持たない、そのままを見つめてくれる相手と巡り会えたことは奇跡で感謝でしかない。

 

アラフィフになると、出会う前の持ち物、美しさや着飾り方など考えしまうけれど、案外そのまんま、見苦しさをさらけ出せる覚悟でいいみたい。

 

だってこの先、人生嘘ついては生きたくないからね。