いつも通りの通勤道。
すぐに信号が変わってしまう、歩行者に優しくない駅前の信号待ち中。
ボクは特別考えることもなく、ただ信号が変わるのを待っていました。
同じように待つ、通勤・通学中の人達。
何ら代わり映えのない光景。
そこに一点普段と違う、スパイスのような刺激が加わりました。
向かい側で信号待ちをしている、おそらく40代後半の妙齢の女性。
普段の光景にこれがプラスされただけでもうスリル満点。
女性は古い自転車に跨って、今か今かと信号が変わるのを待っていますが
何を思っているのか、その女性は刺すような目でボクを見ています。
気のせいかとも思いましたが、怨念すら感じるその視線に恐怖を感じ得ない。
目を逸らしたいけれど、視線を外したら 死ぬ とボクの直感がそう告げている。
信号が青に変わるや否や、女性、いえ、髪を振り乱して自転車をかっ飛ばすババアはぼくを見据えて加速していく。
その様はもはや突撃、特攻の類でありました。
一欠片の期待を込めて、女性の進行から外れようと横断歩道の端にボクは移動しました。
が、やはり期待は期待。
立ち漕ぎでスピードの乗り出した女性の自転車はボクに向かって一直線。
女性の視線はボクにくぎづけ(これだけ嬉しくない視線も久しぶりです)
間違いありません。
ババアは完全にボクを轢き殺そうとしています。
目前に迫ったババアの自転車。
避けようにも追ってくる。
これを避けるにはもはや自転車を止めるしかない!
向かってくるババアを見据え、ボクは半身の構え。
止める!ババアを!止めてみせる!
何やら使命感のようなものを感じ、一瞬にて血湧き肉躍る感覚になりました。
格闘技の大会に出場したときのような緊張感。
いける!さぁこい!
迫り来る自転車のカゴに向かって両手を出し、自転車の進行方向を固定。
カゴがひしゃげつつも進む自転車のハンドル中央を瞬時に掴み
後ろ足を突っ張り棒にし踏ん張りババアの特攻を止める。
無事に止めることができたので、ババアの顔を見る。
どういうつもりだと文句の一つも言いたいところですが
結構な衝撃もあったはずなのに変わらず無表情なババアが怖くて
「前見て運転しないと危ないですよ」
と、言うのが精一杯でした。
ボクは平和主義です。
ともあれ、通勤タイムの駅前横断歩道。
トップスピードに近い自転車を止める青年。
それを、ひしゃげたカゴの自転車に跨りながら無表情で青年を見つめるババア。
一連の流れに血湧き肉躍るボク(ハァハァ言ってる)
たぶんボクより周囲で見ていた人の方が刺激的な朝だったと思います。
