1月24日、すっかり恒例になった半年に一度の新潟行。お昼に出発、猪苗代を過ぎて会津路の天候は穏やかだった。西会津、坂下に差し掛かると景色は一面雪の原。それを囲むように蒼白の山並み。威厳を放ちながら前方に立ちはだかる。その背後から鈍色の雲が迫ってきた。ガードレールに勢いよく張り付いた雪つぶて。今朝方除雪車が掻いていったものらしい・・・。そして遂に降りだす。間もなく行く手は、とめどなく吹き付ける鉛白の点描で塗りつぶされていった・・・。
新潟市内は、一転して雪のなごりすらない静かな趣き。海に面した土地ならではの気候か・・・。演奏場所を確認してから、お土産を仕入れるために街中のイトーヨーカドーに滑り込む。三越もあるが品が良すぎる。かえって地方色豊かな際物に出会えない。浪花屋の元祖柿の種、岩塚製菓のお煎餅、おまけに新種のお米まで買い込んだ。銘柄は『みるきーくいーん』。これが驚くべき甘さとモチモチ感。魚沼産コシヒカリを越えるとか・・・。「すんごい荷物だね~。」とG海老名。
本日の舞台は可児・フラウ・エバ。庶民的なカフェ・レストラン。8畳程の店内中央に1畳半位のテーブル、それを囲むように椅子が並んでいる。そしてステージはといえば、なんとテーブルと壁の間。正確には椅子を外した横2メートル、奥行き60センチばかりの隙間なのだ!頭が真っ白になった・・・・。持ち込みの機材はPAとスピーカーが2台、マイクとスタンドが3本、ギター・アンプとベース・アンプ、楽器がウッド・ペースとギター、そして人間が3人。更に今回はアッキーがスネア持参で助っ人だから・・・・。やむなくそれらを足元に押し込んで、アッキーには窓際の客席を陣取ってもらった。テーブルの下を芋虫の如く這いずり回ってはや小1時間。どうにかスタートに漕ぎつける。
早々目前に鎮座したおば様達は究極のかぶりつきだ。目を合わせるのが気恥ずかしい。音量を気遣いながら恐る恐る始めてみた・・・。地味なBLUESを3曲披露して空気を読む・・・。案外悪くない。それではと曲調を変化させる。先ほどまで、JAZZ談義に花を咲かせていた件の叔母様も、大人しく聴いている。店はいつの間にか満員になっていた。とは言っても10数人。でも不思議なもので席が埋まれば心地よいもの。肩寄せ合う親近感が更にライヴを和ませる。筋書きでは尻上がりに盛り上げようと、アッ
キーには2ステージ目からと頼んでおいた。しかし場は充分に暖まっている。どうしたものか・・・。すると、スネアを叩く軽やかなリズム・・・。じっと待つアッキーに、G海老名が「入っちゃえ!」と促したらしい。阿吽だねぇ・・・。
おもむろに、中途から入店するハンチングのオジサン。軽く会釈して微笑んだ。鬢の白髪に見覚えがある。S水さんだ。毎回来てくれる心強い常連さん。いっそうやる気が増すもの。今度は、左手のお嬢さん2人組が揃ってグラタンを食べ始めた。「すんませ~ん。ツバ飛んじゃうかもしれないけどごめんなさ~い。」と先に謝る。「大丈夫で~す。」の返し。なんだか宴会の余興よろしくなってきた。間抜けな歌詞、場つなぎの馬鹿話、お約束のキメ、何をやっても手元に届く。芋洗い密着ライヴってなところか。愉快だなぁ~。
後半も、引き続き調子に乗って浮かれているところ、突然「バッコーン!!」という雷鳴の如き衝撃音。右手に目をやれば、BB桜田がベースにつかまってしゃがみ込んでいる。何事!!訳が分からぬ。それでも演奏は続けねば!無我夢中でハープソロを吹きまる。うろたえるな!いのっち!G海老名に目配せをして次の曲目を変える。どうやらベースの駒が外れたらしい。そんなことってあり~?「ただ今、工事中で~す。」なんてオチャラケてみせるも、フィナーレに向かって盛り上がるべきところ、正直言って困った。2曲軽く流したところで、ようやくベース復活。「大丈夫っすう。」というBBの野太い声に満場の拍手。「さんざん頑張ったのに、今のが一番受けたねぇ。」と突っ込めば、どっと笑いが来た。これで一安心。最後まで一気に駆け抜ける。あっと言う間の2時間。ご来場の皆様、お店のスタッフの方々ありがとうございました・・・。
撤収を終えたところで、女将さんが「賄いだけと食べてって。」とカレーセットを出してくれた。新潟に来て初めてのおもてなし。感謝!エスニックでフルーティーなご馳走でありました・・・。 店頭で記念写真を撮り、おいとまをする。冬の新潟ってどうしてかいつも良いことがある。奏る度に愛着の増す土地柄。日本海の大都会なのに、ちっとも飾り気ない、ちっとも気兼ねない、そして意外に遠くない。また半年後来るからね・・・。帰途に着き、市内は雪化粧を始めた・・・。
1週間ほどして、もうひとりの常連、K子さんから葉書が届いた。あの時顔を見せなかったので心配していた。「東京に転勤になりまして・・・、夏には帰りたいと思っています・・・。」心温まる文面だった。広い空の下で、人はそれぞれの思いを抱きながら、数々の細い糸で繋がっている・・・。
・・・剛くんへ、写真拝借しました。いいのが撮れてますねぇ。
可児・フラウ・エバ 一番堀通町685-4 ��025-223-0851
新潟ジャズストリート アーカイヴス←写真が掲載されました!