ダンナは、両親と距離を置こうとします。

 

 父親と母親。

 妻と夫。

 

 二人だけで、じっくり考えてもらおう。

 そんなふうに思ったからです。

 

 これが最後のチャンスとなる。

 

 正直、そこまで考えていたかどうか。

 

 けれど。

 

 足を向けることはもちろん、電話すら掛けない。

 そんな静かな日々が続きます。

 

 結果は、僅か三カ月ほどで出ました。

 

 一本の電話。

 

 またしても。

 

 母親からでした。

 

 なぜ、来ないのか。

 もう、おかしくなりそうだ。

 私を見捨てる気か。

 

 電話口で、2時間余り、夫への不満と怒り、呪詛を並べ立て、

 自らの不幸を涙ながらに嘆く妻。

 

 そして、ダンナはこれまでそうだったように、母親を宥め、励まし、明るく答えたのです。

 

 わかった、明日にでもそっちへ行くよ。

 

 何も変わらなかった。

 

 その事実は、余りにも衝撃的過ぎて、寧ろ、気持ちが良いくらいでした。

 

 この世には、本当に変わらない、変われないモノがあるんだな。

 

 つくづく、そう思ったダンナは、ひとつの決心をします。

 

 取り敢えず、解体しよう。

 父親も母親も。

 妻も夫も。

 

 家族も。

 

 ここを離れよう。

 

 ダンナは、〈移住〉計画を練り始めます。

 

 名付けて、

 

 D計画

 

 発動。