D計画』。

 

「―― これは、地震の被害の大小にはかかわらずだ。…… 最悪の場合 ―― 日本列島の大部分は、海面下に沈む……」

 

 こう言い放った田所博士が起ち上げた〈日本列島〉を襲う〈まったく新しいタイプの地殻変動現象〉の可能性について調査・研究する〈計画〉を総称して『D計画』と呼びます。

 

 

 小松左京先生が9年もの歳月をかけて書き上げた名著『日本沈没』(第1部)。

 

 実は、この〈D〉の意味についての言及は、物語内でも特にありません。

 

 〈D計画〉は、主に、今後〈日本列島〉に起こりうる未曽有の地殻変動の可能性と、その規模、影響等について調査・研究する〈D₋1計画〉と、その最終的予測に伴う日本人の〈国外脱出〉と〈資産退避〉を図る〈D₋2計画〉に分かれます。

 

 これらの事柄を重ね合わせると、この〈D〉は、非常に象徴的な一文字だと思います。

 

 〈滅亡〉という意味の〈dawnfall〉

 〈離散〉という意味の〈diaspora〉 

 

 〈両親〉を、そして、少なくともある程度の形を残して来た筈の〈家〉をどうすれば良いか、と考えた時、真っ先に浮かんだ言葉が、この『D計画』でした。

 

 ウチの場合は、〈ダメだ、コリャ〉という意味の〈D〉ですが。