ねぇ、今日の帰り、行かない?
誰が言ったのか、もう思い出せないけれど。
どこに?
フィッシュマーケット
いいねぇ……
そんな、本当に思いつきの行動で。
それでも
いいね
いいね
と、みんなが盛り上がり、そこから話は一気にヒート。
どうやっていく?
歩いていく?
歩いていけるの?
一時間くらいだから歩けるよ。
そうなんだ
行ったことあるの?
うん、一回。
そんな会話。
怖くて、誰ととは聞けなかった、当時からチキンの私。
フィッシュマーケットは本来は朝のものだ。
日本と同じで、朝、魚が水揚げされるから。
でも、観光地でもあるから、夕方でもお店はやってるし、人も多い。
とてもしゃべった。
時々、彼のことを気にしながら、色んな人の色んな話を聞いた。
私は彼じゃなくて他の人のことを好きだと、多分みんな思っていたから、彼と盛り上がってても、単純に話が盛り上がってるだけなんだなと思ってもらえてるっぽくて、気にしなくていい分、ラクだった。
彼は来月、学校が終わる。
私より、一月先に、この世界から巣立っていく。
気付くと、あたりは夕闇に包まれようとしていた。
でも、だれもおしゃべりをやめようとはしなかった。
みんな知っている。
この時間が、永遠に続くわけじゃないことを。
そして分かってる。
こんな時間を過ごすためにここに集まってきたわけじゃないことを。
ただ、この時間は、本来の目的とは違う道草だけど、だからこそこんなに楽しいのだと、みんな分かってたから余計にこの時間が愛しかった。
こうやって、増えていく珠玉の時間を宝箱に閉じ込めて、また一歩、前へ進む勇気を貰う。
2009.8.2
