最も近くて触れられない
その気になれば世界のどこでも
何でも調べて知ることができる
ストリートビューでタイの路地だって見れる
でも今私は六畳の自分の部屋で
外した眼鏡の位置がわからない
生まれてこのかた一度も止まらず
眠り意識のない時さえ動き続ける
自慢の赤い臓器が私には一つある
でもそれを直に見ることは死ぬまで恐らくない
私の見れず触れられぬ闇の中にずっと
世界がいかに広く
さまざまなことを知れたとして
いつかマリアナ海溝の底や
龍のようなプロミネンスにさえ触れられるとしても
私は最もよく知る私の
全く触れられず
己でも理解できぬものを抱えて
今日も鏡をみては
瞬間他人のような気持ちになって
口角をあげ笑い
私をとりもどし一日をはじめる