器
美しいもので満たしなさい
なるべく明るく楽しいもので
透明なコップから
透き通る水が溢れるように
己を満たしなさい
いたづらに哀しく
苦しいものに手を出してはならない
まるでそこに人生の
深淵な意味やある種の
普遍的な知性があるかのように
わざわざ選び触れにいってはいけない
それは重力のように
勝手に働くものなのだから
私たちはそれに負けぬよう
軽やかに飛び続け
喜び 歌わなくてはならない
溢れるどころではない
あなたの土器はひびも多く
底からも抜けていくのだから
なるべく多く心地よいものを
好きなものを注ぎ続けなさい
涸れて 乾いてしまわぬよう
そしてもうわかるとおり
あなたがそこを満たし続けられる
器である時間もそう長いものではない
だから
柔らかなな手触りや良い匂い
涙流す風景 耳に残る音
そして人ー 大事なものに囲まれて
暗い場所に自ら踏み込まぬよう
それらは儀式のように勝手に訪れ
いつの間にか去り終わる
限られた器と時の中を
綺麗なもので満たして
どうか永く笑い
幸せでありなさい