引越し
今度の部屋は四次元立方
広さには事欠かない 時間も
ここで産まれる幼生は皆
右手にチョコ 左手にグミ
ラムネの讃美歌を噛み砕いて産まれてくる
俺はお前たちの兄であったのに
お前たちよりも外の人と過ごす時間が長かった
私は貴方たちの子であったのに
今では臍の緒より遠くで生きている
春にはれんげやたんぽぽ
あらゆる白くて柔らかな
匂いのいい花を摘んで回った
なだらかな緑の傾斜を持つ山の裾で
ここはいま何もない
あるのは洗練された幾何学のみ
皆で共有できるが知覚はできない
遠くの薄い金属音に耳を澄ます