眠気
眠り方を忘れた夜は
自転車にまたがり闇を漕ぎだす
月と街灯に照らされた
二つの影は千切れては伸び
漕ぐ足は重い いったい
身体の速さに心が追いつかないのは何故か
スピードの話ではない
身体はいつも心を先んじる
黒く伸びる影のように
加速度的に身体は残りの人生を駆けるだろう
自転車のシフトを上げても追いつかず
心は少年の頃からいつも置き去りで
所々に何か
大事なものを忘れてきた気がする
この先で手にすることはあるだろうか
T字のハンドルは固定され
ブレーキはないに等しく
眠気を覚えるまで足は
丸いということ以外月に似たクランクを回す