掲示物
7月に灼けたコルク板に
四隅を打ち付けられた
方形の白い告知の紙々
暗号のようなフォントの類々
一隅の画鋲を失った
一片の掲示物が
その裏側に風を孕んで
はためく
他の方形がじっと耐える中で
烏賊のえんぺらのよう
はたはたと 艶かしく生きて
どこかの爆風かそれとも
誰かの赤子の寝息かまたは
風もなく紙の意志?
も一つ画鋲を失えば口のように震え
も一つ画鋲を失えば垂れ下がり
も一つ画鋲を失えばようやく
紙は宙を舞う
四隅を止められた方形の羨みを背に
留められるものと留めらぬものの差が
そこにはあって
掲示されるものは掲示され続ける
床には柔らかい足裏をもった娘によって
四つの画鋲が刺さらぬよう探されるが
八月を前にした床の上に見出されない