ピアノ | 渡辺修也オフィシャルブログ「雨ニモマケズ」Powered by Ameba

ピアノ

十本の指は
白鍵や黒鍵の上を
何遍も行ったり来たり
探していた
何が美しく 何が心に響かないか
何年も何年も

二つの目は五線譜の間を
何遍も上がったり下がったり
高々数センチの幅に
音符にさらに髭や付点を加え
何が心踊らせ 何の間尺なのか

白魚のような指もいつしか
幾千の春を知る梢と変わり
指輪も緩まり
隙間ができるころ
その黒い蓬髪が
鈍い白銀へ筋張るころ

数本の指は触れたのだ
白鍵と黒鍵の間にある無数の音と
どちらかの目は見たのだ
音符の重なりの間にない律動を

そして十本の指と二本の目は
それが何であったのか
白鍵と黒鍵と五線譜と音符の間を
更に加速し
自ずの耳と心への溝を埋めるべく
さらに激しく舞う
黒と白の世界を延々と今も