カティサーク
時として自分が
飲み終わった炭酸の
空の冷たいアルミ缶のように
ひどく客観的に感じられる
そんなことがあるだろう
僕でいえば何十年も目にした
渡辺修也という名前が
とある国の意味知らぬ
音韻記号に聴こえたり
または不惑を越えた肉体の中に
十五の時から漂流したままの精神が
瓶に詰められた白いカティサークのように
なんの航海もしないまま一人でここまで来て
それを今
取り出せぬまま外から眺めているーー
そんな心持ちがふとするだろう
だがここからは波すら無い海を越えることになる
夜よりも暗くて静かな水面を星も見ずに
吹き荒れ抗うものがあればまだましかもしれない
帆さえ張れば進むのだから
いずれにしろ
まずはこの慣れ親しんだ小さな口の
ぶ厚く豊かであった瓶から
水が入る前に解体してでも出るところから
恐れるなバラバラのカティサーク