些事
日常の些事に光を
隈隈の動きに喜びを
広くて近くなり過ぎた世界を
少し一括りに見過ぎていたかもしれない
立体のものを平面に
原因から結果を一筋に
理解できないものを
理解できるものに置き換えて
本当はカサットの赤ちゃんの絵だって
近づいて目を凝らせば
血色のいい柔らかそうな二の腕には
油絵具の凸凹とギザギザがあり
肌には白の上に青色が塗られ
70年にわたる埃臭い油の匂い
そんなのもする気がする
いま一度小さな世界の
豊かな奥行きを知る
目と心と嗅覚 手触り舌触り
カフェの隣の席から聴こえる会話も面白い
世界を旅できないのならば
全く知り得ない己の中の
旅の仕方を覚え
そこを歩く脚力と勇気を