クルトン
その子はシーザーサラダの中から
白いドレッシングをかき分けては
濡れたクルトンを必死に選り分けていた
怒りの目で 嫌悪の手付きで
かたや私はクルトンを好んで
苦手な箸でわざわざ一つずつ摘んで
口に運んでいた
彼の皿の右上にはクルトンが次第に広がる
得体しれず掘り起こされる遺跡みたいに
誰にでも戦っているものがあり
その相手が何であるか私たちは
互いに知ることができない
世界の危機と戦う政治家がいれば
クルトンと戦う子供がいて
どちらが大きく重要な戦いであるかなど
誰も決められはしないのだ
彼は戦っている執拗に
パンを揚げた小さな粒と
それは十字軍以上の聖戦であり
ゲツセマネ以上の祈りであり
アポロ以上のミッションかもしれない
彼は涙を溜め呻きながらクルトンを弾く
私はそれを横目に
レタスよりもトマトよりも先に
すべてのクルトンを食べ
あまつさえ彼の押しのけたのも食べたい