飛行機雲 | 渡辺修也オフィシャルブログ「雨ニモマケズ」Powered by Ameba

飛行機雲

飛べよ今こそあの空へ

その鋼鉄の肉体もて引き絞り

鎖を引き千切り憧れて

轟音を立てて引力圏から

 

今朝見た飛行機雲が

あれは一体どこから来たのか

今では薄く引き伸ばされて

紙テープみたいに翻っている

 

俺は家からそれを呆然とみあげている

 

開けてやれその窓を

だからもう解き放ってやれ

握りしめた拳や

目尻の皺や拭った涙

何十年もかけて

じめじめと育て上げた

心と呼ばれたものも

今ならからっと空に

鳥が降りてきてはそれをついばんでは

新しい歌へと変えてくれるだろう

 

窓を開いて人は

中も外も表も裏もなくなって

ようやくひとつになれるのだ

 

お前は横たわったユーフォニウム

風に白くなびくカーテンの下

フローリングの上に転がり

揺れる影を浴びる

もう鳴らすものもない

あとは聴くだけでいいのだ

 

いまごろどこを飛んでいるだろうか

高度30000フィートの成層圏では

すべてのものは冷たい風に変わるという

 

ほらもう飛行機雲はさらに薄くなって

空だかなんだかわからないものが広がる

 

みんなその下で今日も遊んでいるよ