表面張力
なんという表面張力の美しさ
世界を歪んで返す
丸い屈折率
鏡面の震え
あと一滴で溢れる
水銀の盛り上がり
などなど
今日明日に溜まったのではない
20年をかけてゆるやかに
溜まってきた代物だ
それらのあと一押しで
四方八方から流れ出る
無闇さとくやしさよ
それまでの静謐さよ
揺れては戻る
許容を超えてなお
保とうとする勇気よ
己の存在をミニマムに
矛盾を孕むシステムに
封じ込めようとする健気さよ
なお一滴なお一滴と
他者の好奇を受け入れて
膨らみ耐えうる
膜なき膜よ
さらば針の一突きを
溢れ出たのち
残るは完全な平坦
二度と動かぬ平面
求め続けた
静止という名の平安