サナギプリンス | 渡辺修也オフィシャルブログ「雨ニモマケズ」Powered by Ameba

サナギプリンス

むかし、家でカブトムシを飼っていて大泣きしたことがある。なんてったって山に住んでるから、カブトムシなんてのは人よりたくさんいるのであって、成虫を飼ったところで面白くもなく、あの白くて体の横に茶点のあるプリプリした幼虫から飼うことにしたのだ。

そのカブトムシが、死んだ。

正確にはカブトムシになる前、サナギの段階。プリッとした幼虫はやがてカブトムシの面影を匂わす褐色の薄殻状の塊に変化していった。サナギだ。ここまでは良かった。土やおがくずの間から見えるそのゆっくりとした変化に非常に興奮したもんだった。

だが、いっこうに殻はやぶれず、やがて、プラスチックでできた虫かごから、あのカブトムシ特有の甘みが少し混ざった異臭が漂う。

おかしい、と思ってやがて角になるべき部分を人差し指と中指で挟み、持ち上げた瞬間、ズルリ、という、風呂上がりにふやけた指から濡れた絆創膏を抜き取るような感触、そう、角がとれた。サナギはサナギのまま、内部で腐っていたのである。

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ぐはぁー!腐ってやがる

僕は幼いころの記憶というか、そもそも思い出自体があまり残らない性質なんだけど、あの時のことはよく覚えていて、烈火のごとく泣きじゃくり母親に当たりまくった記憶がある。

八つ当たりされた母親はさらに当然記憶に残り「あの時ゃ、あんた、なんだかすごい泣き方してたよ、ほんとに」と今でも言い草として、その昔まるごんというスーパーでミニカーを買ってもらえず床に泣いて寝転ぶという、子供定番の癇癪を起こしほっとかれたのと同じくらい語られるのは仕方ない。

泣いた理由は二つあった。ひとつは「僕のせいじゃないよね」という必死に訴えかけ。成長の度合いをみたくて毎日土をほじくってサナギをいじってたのが悪かったのだ、あんな一世一代の変態中だ、そっとしておいて欲しいに違いない。俺だったら怒る。

わかってたんだけど子どもだもん、見たくて仕方なく、触っているうちにストレスだかなんだか「無理っすわ」とサナギは成虫になるのを拒否&昇天。

たかがカブトムシとはいえ、一個の命を自分が阻んだという責任から全力で逃れたいなすりつけたい「俺のせいじゃねえ」という幼心にも狡い責任転嫁、これが八つ当たり。ほんと母親に申しわけない。ごめんなさい。


で二つ目は、サナギ自体に対する不可思議と恐怖。これが自分のリトルプリンス観につながっている。


はー、前置きで書いたんだけど、すんごい長くなったからまた明日。