六月の夜更け マックで

池袋西口のマクドナルドは
雨に囲われている

雨宿り中の傘のないフィリピーナは
未だフィリピーノの可能性も捨て切れず
性別もあやふやのまま
雨上がりを待っている

僕はMacで音源の編集をしている

あいまいなフィリピーナは
携帯の電池がきれたらしく
USBの差し込み式の充電器をもって
コンセントを探しながら
コーヒーを右手にうろうろとしている

作業中の音源よりも大きな声で喋るので
ふと目をやると
ばっちり目があってしまった
その後は言葉もなく成り行きで
なんとなく僕はMacのUSBを指さして
はにかみながら充電してあげている


六月の夜更け
雨囲いのマックで
性別のあいまいなフィリピーナ(ノ)と
日本人的なあいまいさの僕は
なぜか同席している

彼(または彼女)はえらく感謝した様子が
携帯がオンになるや否や通話をはじめる
会話の音量に比例して
作業の音量も上げる
電話は母国語だが通話が終わると
日本後で話しかけてくる
言語もあいまいだ
しばらくの無言
フィリピーナ(ノ)は連れを待っている
僕は編集が進まない

雨はしきりに降り続いている
外を行き場のなさそうな傘達が行き来する

フィリピーナ(ノ)の連れが来た
怒ってるのか喜んでるのか謝ってるのか
会話の音量が大きくてわからない
一つわかるのは
連れの性別もまたわからないということだ

フィリピーナ(ノ)は連れと相傘で出て行った
去り際の後姿に
ペッタンコのサンダルから
はみ出した両の踵に絆創膏が貼ってある
どうやら仕事のパンプスは
サイズが合わないらしい

雨は降りしきっている
音源は編集が終わらない
机には濃い口紅のついた
飲み残しのコーヒーが置かれている

雨はまだやまない












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