振り付け雑感 | 渡辺修也オフィシャルブログ「雨ニモマケズ」Powered by Ameba

振り付け雑感

振り付けが始まった
踊りを踊るのは好きだ
だが残念なことに怪我が多い
ずいぶん前に整形外科の先生にきいたところ
もともとがそういった使用の身体だそうで
ある意味仕方が無いという
いまでは動かないパーツもままあって
バットマンもスプリットも夢のよう
疲れを取るための柔軟でさえ
痛みを覚えるのだから笑ってしまう

まあそもそも踊るというのは
故障の多い行為だが
傍らではそんな艱難をくぐりぬけ
ダンスに特化された身体や
踊りたてのみずみずしい身体をもって
晴れた日の子やぎのように
びゅうびゅんと飛び跳ね回っている者もいて
その姿は汗に輝いて美しく頼もしい
共に板に立つ仲間なのに
気づけば羨望の目で眺めている
自分にもあんな風に動く身体があればと
微かな嫉妬も覚えるのも
気づかぬ振りをしながら眺めている

しかしどこかの誰かがいっていた
ポーカーと同じで配られた手札で勝負するしかない
極力良い手にみえるように
強気で涼しい顔を崩さず
時にはブラフにも似た動きで人を驚かす
私にしか配られない私の身体で
私にしかできない動きによる
私だけの踊りがあるはずで
それゆえ人を羨む暇はない
これもどこかのサッカーの名将がいっていた
人を動かすのではないボールを動かすのだと
そう身体を動かさず何かを動かすことだ
目下の稽古はそれを探す旅となる

いかに脱力して力めるか
いかに止まったまま動けるか
いかに踊らず踊れるか
私はバレエを踊らない
私はバレエで踊りたい
私はジャズを踊らない
私はジャズで踊りたい
私はコンテを踊らない
私はコンテで踊りたい
私はダンスを踊らない
私はダンスで踊りたい
私は心を踊らせたい
私は思考を踊らせたい
私は言葉を踊らせたい
私は人生を踊らせたい
それゆえ身体を踊らせたい

皮膚の内と外を釣り合わせたい
自分と世界の境をなくしたい
床に立ったまま空気に溶けてしまいたい
つまるところ
重力との共存
空間への親和
踊るとは私にとってはいまのところ
周りからみてどうであれ
そんなところであっても良い

さて、そんな神話じみた動きができたなら
この激しい筋肉痛とも
いつかおさらばできるだろう