ハイフェッツ「シャコンヌ」② | 渡辺修也オフィシャルブログ「雨ニモマケズ」Powered by Ameba

ハイフェッツ「シャコンヌ」②

昨日のつづき。

このハイフェッツという人の演奏で一番驚いたのは、まず「音が一つ一つちゃんと聴こえる」ということでした。それまで、「ああ、シャコンヌっていうのは良い曲だな」というくらいで聴いていたのですが、ハイフェッツのを聴いたとき、

「あ、シャコンヌってこういう曲だったんだ」

と感じました。


もうちょっと詳しく言えば「きっと楽譜に書いてある音が全部聴こえたらこんなかな」という感じ。もちろん僕はシャコンヌの楽譜もみたことないし、みたところでわからないんだけど、きっとそうなんだろうと。

あとで調べてみると、このシャコンヌという曲は「重音奏法」といって同時に二音以上の音を出さなくてはいけない技術が多用されているらしく、弾くのに非常に高い技術が要求されるそうです。ハイフェッツのは、この重音がはっきり聴こえて、箇所によっては聴いているうちに「これ、本当に一人で弾いてるの…?」と聴こえるようなところも出てきます。

それくらい、一つ一つの音がクリアに聴こえるのです。

他の奏者のエモーショナルな演奏が多い中で、ハイフェッツの演奏は非常に硬質に感じるのですが、僕にとってはそれが性に合って、以前にも書いたように、緻密で幾何学的なバッハの構成が良くわかってとても好奇心を刺激されるものでした。

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これは僕らにも言えることで、芝居をやる以上、感情を表に出すことはもちろん重要なことなのですが、やるべきことを欠いたり、過剰にに膨らませたりせず、シンプルに演じることのほうが、台本や作品の骨太な魅力を表現できることがあるのです。

ここらへんのバランス加減が難しいわけですが。