精米ノスタルジー | 渡辺修也オフィシャルブログ「雨ニモマケズ」Powered by Ameba

精米ノスタルジー

いよいよ稽古場では賄いが始まりました。

「同じ釜の飯を食う仲」

という言葉の実践であり、忙しくなってコンビニご飯などになりがちな時期に、手作りでしっかりご飯をつくり、カンパニーメンバーのみならずスタッフさんもお客様も一同に夕食を食べ、一丸となって作品創造に向かう大事な時間です。賄いが始まると稽古も佳境です。

さて、白米よりも、玄米から精米して炊いたほうが、ビタミンB群も多く美味しいということで、カンパニーでは精米からご飯炊きをします。

ありがたいことに、そういった事情をしっているお客様からは脱穀したばかりのお米を頂いたりします。

お米が届いた時のカンパニーメンバーの興奮のしようといったらもう(笑)。お米が通貨として使われていたというのがよくわかります。
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さて、そういうことで、稽古中にも関わらず、食堂では精米機がフル稼働しています。

日本広しといえども、扉一枚隔てて、主演女優の歌声の美しいビブラートと精米機のガラガラという音が共存する稽古場はあまりないのでしょうか。


僕は精米の様子をみるのが大好きで、全く飽きません。ということで精米は僕がやることがままあります。皆がダンスを力強く踊っている間、僕も力強く精米を行っています(もちろん出ないシーンです)。誰かがやらねばならないのです。非常に強い使命感にかられ、お米を七分づきにするのです。

そのうち、精米機が人格を持っているように思えてきます。「米山タモツ」と僕は呼んでいます。

頭に茶色いお米を入れると、口からちょっと白くなったお米が出てきます。これしかできない不器用なやつなんです。でも、レトロでお茶目なやつなんです。

タモツは放っておくと糠が溜まります。自分では処理できないので、僕がしてあげます。そんなことを延々と繰り返すうちに、二人の間には言葉にならない感情が芽生えるのです。

タモツの頭にお米を入れたときの段々と減っていく様子が、幼い頃に実家の地下で遊んだ、蟻地獄に砂が飲み込まれていくのに似ていて、妙にノスタルジックな気持ちになるのです。それを薄っすら微笑みながら、僕は飽きずに眺めているのです。

そんな姿をみて、カンパニーメンバーからは、僕が半ば偏執的に精米を行なっているように見えるそうです。本当は稽古場にあるお米を全て精米したいくらいなのですが、やはりお米も精米したてが美味しいので、一袋精米したら、使い切るまでは待ちます。

早くみんながご飯を食べて、またタモツと遊ぶ日が来るのを、僕は心待ちにしているのです。



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