絵画「風船を押す男」 | 渡辺修也オフィシャルブログ「雨ニモマケズ」Powered by Ameba

絵画「風船を押す男」

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「風船を押す男」
クロード・モネ(1924)
油彩 カンバス 480×360
国立芹が谷近代美術館収蔵


印象派の巨匠モネの最晩年の作品。睡蓮シリーズの後、緑内障の手術を受けたが視力をほぼ失ったモネが、筆を置いたと思われていた時期に描かれていた作品。カミーユ夫人が個人的に所蔵していたものが、近年、発見された。晩年のモネとしては非常に珍しい人物画であり、大道芸人のパントマイムのパフォーマンスをモチーフとしている。

人物画であるが、モネの真骨頂とも言える「光のうつろいを瞬間的に切り取る」感性はこの絵にも存分に生かされており、パントマイミストの刻一刻と変化する動きの中で、風船を軸に時間と空間を固定している瞬間を鮮やかに描写しており、ある意味モネの培った技術の集大成ともいえる作品に仕上がっている。

モデルのパントマイミストは不明。しかし、カミーユ夫人に当てた書簡や、モネ自身の日本への強い傾倒、そしてモデルの着衣がWILDTHINGのパンツと、PATAGONIAのロングスリーブシャツであることから、登山用品が比較的揃いやすく、上野公園にも近いアメ横近辺の人物と推測される。

2010年、NYのサザビーズで、人物画としては史上最高の420億ドル(当時で約5兆円相当)でロシアの投資家が落札したのは、今でも記憶に新しい。


評:和多鍋 秀弥




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