野球ファンの間では有名な話ではあるのだが、私は文章で読んだことがある程度で特に映像とかで観たことは無かった。

 

 29日(土)、フジテレビの 『スポーツLIFE HERO'S』 が数分のVTRを作って流したのだが、もう涙無しでは観られなかった。

 

 27人目のバッターの打球は、1、2塁間へのボテボテのゴロ。これを一塁手が逆シングルで捕球。ベースカバーに入ったガララーガに送球され、打者走者の足よりわずかに早くベースを踏みメジャーリーグ史上21人目の完全試合達成…と誰もが思った瞬間、1塁塁審のジム・ジョイスは大きく両手を広げまさかのセーフの判定・・・。大観衆からは当然の大ブーイング。しかし、ガララーガはやや引きつったような苦笑いを浮かべるだけで抗議はせず。

 

 次のバッターを簡単に打ち取りゲームセット。その瞬間、内野手が揃ってジョイスをはじめとする審判団へ猛抗議。しかしガララーガはそこに加わることもせず、やや複雑な表情ではあったがキャッチャーなどと勝利を喜んでいた。それでもスタジアムはしばらく大ブーイングが収まらなかった・・・。しかもその日はニュースにも大々的に取り上げられたり、翌日の新聞各紙でも”誤審”と大きく取り上げられ、1塁塁審だったジョイスは犯罪者かのように取り上げられてしまったのだ。

 

 さすがの僕もここまではウルっときた程度だったんですけど、この話はここからが本当に感動的なんですよ。

 

 ジョイス本人も完全に誤審と認めたその翌日の試合、実は球審を務めることになっていたのだ。ジョイスにブーイングする為にスタジアムに行こうというような声が沸き起こってしまい、もうジョイスは休ませた方がいいのでは・・・という関係者の声もあったようなのだが、本人は、今日休んだらもう審判としてグランドに立つ自信は無くなってしまう・・・というような気持ちもあったようで、強行出場を選択。

 

 しかし予想通り、試合前からジョイスの姿を目にするとファンからは大ブーイング。この試合、いったいどうなるんだろう…というような異様な空気が漂っていたようだ。

 

 そして、試合前のオーダー交換。普通は各監督が審判の前でオーダー表を交換して少しの会話が交わされたりするのだが、デトロイト・タイガース側はそこに監督の姿は無く、オーダー表を持って現れたのはなんとガララーガだったのだ。(この文章を打ってるだけでまたそのシーンが思い出されて号泣しそうなんですけどね^^;)

 ガララーガは笑顔。ジョイスは目頭を押さえうつむき涙がこらえ切れなかったようだ・・・。

 

 どんな映画にも勝てない生身の人間同士の本当に気持ちの通じ合う感動のシーンだった。

 

 直前まで大ブーイングだったスタジアムの観客は、このシーンを目にし、自分たちの行為が恥ずかしいことだったと反省したかのように、アッという間に拍手と歓声に変わったのだ。

 もうガララーガの紳士の中の紳士と言える態度や行動はもちろん多くの人々の感動を呼び称賛されるのは当然なんですけど、私はこのジョイスという審判も本当に立派だと思いますし、本当に人間的にカッコいいと思います。

 

 野球には”完全捕球”というルールがあるんですけど、それもかなりの項目に分かれているんですけど…。この27人目の打者の時のガララーガの1塁ベース上での捕球がちょっと際どかったのは事実なんですよね。もちろん判定はアウトが正解だとは思うんですけど、ガララーガも最後の最後でものすごくその捕球には緊張感があったはずで、グラブの中でややボールが遊んでいたというか、グラブのポケットでジャストにキャッチした感じではなかったんですよね。自分が捕球を狙った位置よりかなりグラブの先の方でボールを取る形になって、更にグラブを閉じるタイミングまでちょっと早過ぎた感じがあって、グラブでボールを挟むような感じになって、普通に奥で捕らえてボールを包み込むような捕球にはなってなかったんですよね。その状態になった瞬間は、打者走者はベースにはギリギリ到達はしていなかったんですけど、ガララーガもその直後にそのボールをキッチリとグラブの奥に収めようと持ちかえてしまってるんですよね。その持ちかえてグラブに収め直した時には打者走者はベースを完全に踏んだ後だったんですよね・・・。その動きが無ければその誤審はおそらく生まれなかったはずです。ただ、グラブで挟むように取っていてもそれは捕球は捕球なのでやはり誤審は誤審なんですよね。

 ただ、ベテラン審判のジョイスが誤審をハッキリと認めた事がこの感動のシーンを呼ぶことにもなったわけですし、本当に立派だと思います。もちろんガララーガの完全試合はなりませんでしたけど、審判が完全試合だったとハッキリと認めているようなものですし、過去の20人の完全試合達成よりも有名なシーンになったことは間違いないわけですし、ガララーガも、完全試合を達成していたよりも野球選手としてはもっと大きなものを手にしたような気もしますし、もう悔しいという気持ちはそんなにはないかも知れないですしね。

 オーダー表の交換が終わって、ダッグアウトに引き上げようとするガララーガの肩を無言で強めにポーンと叩いたジョイス。そこには 『ありがとう、お前はいい男だな。お前に救われたよ』 という無言のメッセージが間違いなくあった。最後は泣くのを我慢していたあのジョイスの表情・・・。思い出すだけでまた号泣しそうです・・・。