『月刊社労士 2011年5月号』(発行:全国社会保険労務士会連合会)より

 

統計的手法で賃金の問題を探る(2)

 

『月刊社労士 2011年5月号』に、事例で見る社労士業務という特集で、労務監査をテーマにした記事が載っていました。1回目は人事・賃金の制度設計や改定に関しての監査が取り上げられています。その監査方法が、統計的手法で賃金を分析するという内容で興味深いものでしたので、要旨をまとめてみました。

 2回目は、分布図と層別の分析事例です。

 

2.分布図と層別で賃金を分析する

分析の事例として、異なる2社の年齢カーブが取り上げられています。横軸に年齢、縦軸に基本給を取ると、双方とも右肩上がりのほぼ直線上に分布しますが、さらに役職の面から層別にくくると次のような特徴が見えてきます。

A社>

 ・一般と主任、店長の2つにまとめると、25万円辺りで、上下に大きく分かれる。

 ・さらに主任と店長を分けてまとめると、きれいに分割することができず、くくった楕円が重なってしまう。

B社>

 ・役職別に楕円を書いても、全体がだんご状になってしまい、役職別の相違が見えない。

 ・40歳代の係長が、同年代の部長や課長と同じ、もしくは高額の基本給となっている。

 

A社は、年齢・役職という「ものさし」である程度の均整が取れているのに対して、B社は基本給の役職との相関がはっきりしていません。言い換えると、B社は年齢によって基本給がほぼ決まり、役職による基本給の違いが反映されていない、ということですね。

A社の場合はこの現状をベースにおいたまま、年齢格差の縮小、役職間格差の拡大という社長の方針を基本給テーブルに織り込んで改定することで、比較的容易に再整備することができたそうです。一方、B社は役職から見た基本給の設定がない状態であったため、先ずその基準作りから始めなければなりません。しかし、既に適用されている年齢ベースの基本給をいきなり変更することはできません。そのため、調整給とか、いろいろな手立てを使って是正することになったそうです。

 

年齢-基本給という単純な分布図でも、もう一つ、役職とか職種、職能といった第3の観点を入れてくくり直すことでいろんな分析ができ、見えなかった問題点が明らかにできるのですね。分析手法としては基本的なことですが、大事なことだとわかりました。

 

次回は、年功と成果の分布分析をまとめます。

 

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