厚生年金保険 - 60歳の選択(8) - 続けて働く ⑥

 

60歳の選択」と題して、定年退職を迎えようとしている高年齢者の方に向けて老齢厚生年金を中心とした老齢給付と、それを受給する際に関係してくる雇用保険の求職者給付と雇用継続給付などについて解説しています

 

連載の8回目は、60歳以後に働いた場合の総取得額について、賞与がある場合を試算してみます。

 

6.賞与がある場合

(1)計算の方法は?

60歳以後、職に就いて賞与の収入がある場合、影響が出てくるのは在職年金のカットのみです。これによって在職老齢年金の額が変わってきますが、賞与が増えればその分カットが増えるのでもらえる年金額が減ってしまいます。高年齢雇用継続給付金と併給調整については、賞与は関係しません。前々回(60歳の選択(6)を参照ください。

計算方法は前回と同じです。給与・賞与の金額計算に、給与と1カ月分の賞与を使います。


総取得額 = 給与・賞与 + 在職老齢年金 + 高年齢雇用継続給付金 - 併給調整

         = 給与・賞与 + (年金月額 - 在職年金カット) + 高年齢雇用継続給付金 - 併給調整

  

(2)60歳到達時賃金 40万円、 年金月額 10万円(年金 120万円)、 賞与 48万円(年額)の場合

① 上記の前提で、先ず60歳以後の給与が28万円になった場合を計算してみます。

 在職年金カット = (28万円 + (10万円 + 4万円) - 28万円) X 2分の1 = 70,000円

 高年齢雇用継続給付金 = (40万円 X 0.75 - 28万円) X 0.65 = 13,000円

 併給調整 = 13,000円 X 0.4 = 5,200円

 

よって総取得額は、

 28万円 + ((10万円 + 4万円) - 70,000円) + 13,000円 - 5,200円 = 357,800円

 

② 次は60歳以後の給与が24.4万円になった場合を計算してみます。

 在職年金カット = (24万円 + (10万円 + 4万円) - 28万円) X 2分の1 = 50,000円

 高年齢雇用継続給付金 = 24.4万円 X 0.15 = 36,600円

 併給調整 = 24万円 X 0.06 = 14,400円

 

よって総取得額は、

 24.4万円 + ((10万円 + 4万円) - 50,000円) + 36,600円 - 14,400円 = 356,200円

 

③ 最後に60歳以後の給与が22万円になった場合を計算してみます。

 在職年金カット = (22万円 + (10万円 + 4万円) - 28万円) X 2分の1 = 40,000円

 高年齢雇用継続給付金 = 22万円 X 0.15 = 33,000円

 併給調整 = 22万円 X 0.06 = 13,200円

よって総取得額は、

 22万円 + ((10万円 + 4万円) - 40,000円) + 33,000円 - 13,200円 = 339,800円

 

(3)まとめると...

賞与を考えた場合でも、総取得額は、①の給与が70%に低下した場合が高いようですが、所得税、社会保険料、雇用保険料も引くと、②の給与が61%に低下した場合が最も高額となります。

(すみません、そこの計算は省略します。)

①~③のどの場合でも賞与の分として本来ならば月額4万円増額するはずが、2万円しか増えていません。本来の年金額の2分の1が在職年金カットとなるためです。総取得額は増えているとは言っても、自分の労働した成果の半分しか収入につながらない感じで何か納得行かないものが残ります。

 

次回は、これまでの総取得額の計算の中で考慮すべき点についてまとめます。

(*平成21年10月1日現在の法令を基準にしています)