厚生年金保険 - 60歳の選択(6) - 続けて働く ④

 

60歳の選択」と題して、定年退職を迎えようとしている高年齢者の方に向けて老齢厚生年金を中心とした老齢給付と、それを受給する際に関係してくる雇用保険の求職者給付と雇用継続給付などについて解説しています

 

連載の6回目は、在職老齢年金と高年齢雇用継続給付金の併給調整についてまとめます。

 

4.併給調整

(1)年金カットの行われ方は?

高年齢雇用継続給付金は、60歳以後に給与が75%未満に下がる場合に受け取れます。ただし在職老齢年金と一緒に受給しようとすると、年金のカットが行われます。これを併給調整と言います。

先ず基本事項の整理ですが、高年齢雇用継続給付金が受け取っていない場合は、在職老齢年金のカットはありません。全額支給されます。言い換えると、年金カットは、60歳以後に給与が75%未満に下がって高年齢雇用継続給付金が受け取れる場合に行われます。

 高年齢雇用継続給付金は、60歳到達時賃金の75%~61% に低下した場合と、61% 以下に低下した場合で計算方法が異なっていました。そのため併給調整も同様に、計算方法が2つのパターンに分かれます。

① 60歳時到達時賃金の75%~61% に低下した場合

 賃金が逓減する程度に応じ、一定の割合で6%まで逓増するように定められた率を標準報酬月額に掛けた額が、年金から支給停止される

② 60歳時到達時賃金の61% 以下に低下した場合

 標準報酬月額6% が年金から支給停止される

 

(2)併給調整される金額の考え方は?

上項のとおり、特に 60歳時到達時賃金の75%~61% に低下した場合の計算方法は難解です。そこで、 60歳時到達時賃金の61% 以下に低下した場合で考えてみます。

高年齢雇用継続給付金は、給与の15%です。一方、併給調整による年金の支給停止は、標準報酬月額の6%です。給与と標準報酬月額は厳密には同じではありませんが、ほぼ同額と見なすと、併給調整は高年齢雇用継続給付金の4割( 6% ÷ 15% )と考えることができます。前回の高年齢雇用継続給付金の説明の中で、① 60歳時到達時賃金の75%~61% に低下した場合、以下のような簡易な計算式で給付金の額を近似計算しました。

 

( 60歳時到達時賃金の75% - 60歳時以後の給与額 ) X 0.65(65%)

 

ここで、併給調整は高年齢雇用継続給付金の4割という考え方を当てはめると、① 60歳時到達時賃金の75%~61% に低下した場合の併給調整の額は

 

( 60歳時到達時賃金の75% - 60歳時以後の給与額 ) X 0.65(65%) X 4割(0.4)

 

と計算することができます。

 

(3)まとめると...

併給調整は「60歳到達時賃金」と「標準報酬月額」(賞与は関係なし)から決定されます。調整の起因は高年齢雇用継続給付金の支給ですが、支給停止されるのは年金(在職老齢年金)の方です(時々分からなくなります)。だから、支給停止額は標準報酬月額から計算されるのだ、というふうに私は覚えています。

似ていますが、高年齢雇用継続給付金は「60歳到達時賃金」と「給与」(賞与は関係なし)から決定されます。雇用保険の制度なので、標準報酬月額ではなく給与になっています。

在職老齢年金は「総報酬月額相当額」=「標準報酬月額」+「標準賞与額」から決定されます。

 

ここまでで、在職老齢年金と高年齢雇用継続給付金、そして併給調整の内容を一通り説明できましたので、次回は60歳以後に働いた場合の総取得額を試算してみて、どの程度給与を貰う働き方をすればお得感が高くなるのかを考えてみます。

(*平成21年10月1日現在の法令を基準にしています)