相談支援専門員をしていると、いろいろな事業所を回る。仕事柄いろいろな福祉事業所とその考え方に出会う。

 事業所を訪れ、職員の方から担当する利用者様の生活、体調、情緒、就労、余暇の様子を聞き取る。そして利用者や保護者と会話したり、表情を観察したりしながら本人の意思を聞き、真意を推測したりする。1か月~半年ごとのモニタリングを行い、そしてその後の生活に活かしていく手助けをしていく。それが相談支援専門員の仕事。

 現在私の相談支援事業所の利用者様の現在使っている事業所だけでも20くらいある。入所支援施設、グループホーム、就労支援(A型・B型)、就労移行支援、居宅介護、生活介護、児童発達支援、放課後等デイサービス、社会福祉協議会・・・。他に一般企業へも訪問することがあり、多岐に渡っている。

 その一つ一つを回るたびにいろいろなことを感じ、考えさせられる。

 それぞれ様々な理念や思いを持って経営されている。障害等の課題を抱える方をどう支援していこうとしているのか、第3者的な立場で見ている私にはいろいろなことが垣間見えてくる。

 例えば就労の場。就労継続支援作業所でも、かなり考え方が異なる。
 
 A型(雇用形態、最低賃金の保証あり)B型(障害や症状にあわせて、無理をしない範囲で比較的簡単な軽作業を少しずつ自分のペースでこなしていくことができる)がある。働く場というよりも生活介護に近く、緩やかな作業内容と時間を提供し、生活のリズムの立て直しを重視している事業所があり、作業によって利用者様に就労することの喜びを経験させ、少しでも還元することを目指している事業所がある。一般就労を目指すことを意識して叱咤激励して鍛え、還元のために利益の追及をしている事業所もある。また一般就労を目指すよりも定員を確保するため、「囲い込み」をし、現状を維持しようとする事業所があるのも事実。

 施設入所支援施設、グループホーム、居宅介護サービスなども同じことを感じる。

 事業所の雰囲気も様々。

 

 和気藹々として、利用者同士が会話を楽しみながら作業に取り組んでいる事業所がある一方で、作業中は私語禁止、ノルマに追われ、皆真剣な表情で取り組まれている事業所がある。人間関係については、職員がうまく中に入り、上手に調整されている所もあれば、一般社会と変わらないくらい厳しく接している所もある。

 これらの特徴を冷静な視点から見て、その利用者様の最も適したタイプの事業所を模索し、うまくとけ込むことができるようにしていく。私なりに事業所へも提案もしている。

 時にはその利用者様にとって現在の事業所が合わないと感じることがある時は、他の事業所を検討し、見学・体験を勧め、変更することも大切なことだと考える。実際に変更し、うまくいった事例もある。移られた事業所には喜べないことかもしれないが、利用者様に喜んでもらえた時には「これで良かったのだ」という思いを感じる。

 「コーディネーター」という言葉がある。「ものごとを調整する人」という意味だが、相談支援専門員はまさしくその役割。私自身教員をしていた時代から、障害のある子どもたちの特別支援教育コーディネーターという役割を担ってきた。また、「ソーシャルワーカー」でもあると思う。その方の相談に乗り、特性、性格、個性をしっかりと見つめ、就労・居住・余暇生活などの過ごしやすい環境を整え、周りとの調整を図っていく。

 私は本人、親、事業所の立場や考え方を汲み取りながら、その方の人生の充実のため第3者的な視点から、冷静に判断し導いていきたいと思っている。事業所、場合によっては親・保護者にも忖度はしないつもりでいる。

  私の役割は障害のある方に寄り添い、その方の意思決定をアシストしながら楽しめる人生のコーディネートを行っていくことである。そのためには常に研修をし、見識をしっかり持って最上と思える判断ができるようにしていきたい。

 私にとって仕事上の一番の夢は、その方が笑顔で充実した毎日を過ごせることであるから・・・。