立春を過ぎ、三寒四温の時期を迎えている。寒がりの私にとって最も大好きな春が待ち遠しい。

 しかし私にとってこの時期は大きな試練が待ち構えている。スギ・ヒノキの花粉症である。

 子どもの頃から、アトピー性皮膚炎があり、アレルギー体質だった。大人になってアトピーはいつの間にか解消したので、良かったのだが…。

 発症したのは23歳、初任校の1年目の終わりかけの時。ちょうど「花粉症」というアレルギー疾患の名称が巷にひろがりはじめた時期であった。田舎に住んでいて自然が好きな私は、それまでもよく野山に出かけていたのでまず、罹らないだろうと高をくくっていた。

 しかしある日、目にごみが入って取れないという感覚に陥り、取ってもらおうと眼医者を受診したら、「立派な花粉症です。しかも結構強いかもしれません」と宣告された。以来35年以上、妻よりも長い付き合いをしている。

 初めのうちは卑屈になっていた。「スギとヒノキで2か月かかるから、これから先の人生の六分の一の期間は花粉症で悩まされることになる」と受け取っていた。

 私の場合、まずくしゃみから始まる。毎日必ず数回その時は訪れる。連続して10回以上続くこともある。教員時代、卒業式の時はかなり気を使ったものだ。

 次は鼻づまり特に夜中詰まって息ができず、口呼吸になるものだから、喉を傷めてしまい、発熱してしまうこともよくあった。夜眠れない時期ともなる。声も変になり、話す職業だったこともおっくうにさえ感じた。

 最も憂鬱に感じているのが目のかゆみ一度掻き出すと止まらない!掻いても掻いてもかゆみは止まるどころか、搔きすぎて痛い!腫れぼったくなるのにかゆい!掻かないようにしているが夜中はいつの間にか掻いていて、朝は真っ赤に充血していた。イライラして家族に当たることもあった。

 そんな私、10年ぐらい前から考え方を変えた。卑屈だったこの時期について、ポジティブな考えでリフレーミング(捉え直し)することで、気分が楽になったのだ。

 2か月続く花粉症とその症状は変わることはない。でも一年のうちで最も苦手な冬の終わりを暗示し、最も好きな季節である春を待つ間の一つの「通過儀礼」と受け取っている。症状が感じられるようになると敏感に鼻や目のセンサーが働き反応する私は「来たか!」と春が近いことを意識する。卑屈感はない。

 とりあえず、目のかゆみ対策として、花粉症用メガネ、目薬を準備する。かゆくなるとしばらく目を閉じてその時機を少し我慢すると一度切り抜けられることも分かってきた。鼻詰まりは夜寝る時のマスク。こうすると喉の腫れはかなり軽減されるから。くしゃみは思い切り気持ちよく出す。体の中にいらないものを一緒に出すような気持で。

 減感作療法や飲み薬は使用しない。目薬もできるだけ使わず、一日1回以下が多い。高血圧などでいろいろ抱えている私には、こんな時こそできるだけ医療には頼りたくないから。また、多動傾向でもあり、春に向けて畑の準備は事欠かしたくないので、アクティブに外へも出る。



 最近、ポジティブに物事を考えるようになってから、勝手にリフレーミングして捉えるようになってきている。不運、うまくいかない対人関係、失敗などのマイナスに思えることにおいても、イライラすること、怒りを感じることが減ってきた。かえって「自分に与えられた試練であり、修行の時」と考えることにしている。

 自分で言うのもなんだが、一種の「悟り」?

 大変だと思える時こそ、自分を鍛え、人生を充実したものにしていく時。毎年花粉症の時期はそんなことを考えながら、私は今を楽しんでいる。