「一日の様子を、できるだけその日のうちに、詳しく保護者に伝える」

 特別支援学級担任、通級指導教室担当になってから特に肝に銘じ、心がけてきた。その中でも連絡ノートはその最たるものであった。

 自分も障害のある子どもの保護者であるので、子どもが今日はどんな学校生活を送ってきたのか、楽しく過ごせたのかを知りたいと思っていたからである。

 特に知的障害のある子どもは、学校での一日を保護者に自分の言葉で伝えることには困難がある。

 自分から話すことがあっても、語彙が少ないのでよく伝わらない、聞いても的外れな答えになる。そうしたことを思うと、子どもに代わって担任が保護者に伝えることが大切だと考えるようになった。
 
 私は市販の連絡ノートを使わず、自分が書きやすいように書式を設定し、毎日1枚の用紙に手書きで書き込んできた。

 

 その日の授業の教科とその内容、次の日の予定と準備するもの等については、書ける子には書かせたが、その子の実態に応じて無理な子の分は私が書いたり、なぞらせたりした。

  特別支援学級担任をし始めた時には、とにかくその日の様子を詳しく、ありのままに伝えていた。障害等、支援を必要としている子たちはどうしてもできなかったこと、失敗したことの方が多いが、それも正直に書いていた。

 当然、そうした内容の連絡は保護者としてはあまり聞きたくはないことであり、喜ばれなかったのだろう。また、私の配慮が足りなかったこともあったのだろう。

 しっかりとした意見を言われるある保護者から気を遣われながら指摘されたときにようやく気づいた。特別支援学級の担任と保護者は通常学級よりも子どもの数が少ない分、親密になる。そうしたことも考え、相手を傷つけないように言葉を選びながら言われたのだ。

 大反省した。言葉って難しいと思った。
 
 以後、その日の様子については、まず良かったこと、がんばったことを中心に、プラス面をほんの些細なことでもできるだけ見逃さず、書いて伝えることにした。マイナス面はあえて文章に残さず、電話連絡の時や保護者と顔を合わせた時に言葉を選びながら伝えることに心がけるようになった。

 通級指導教室担当になってからもその姿勢は続けた。
 
 その日活動をして学んだこと、また学校で楽しく過ごせたか、友だちとはどういう関係だったかもできるだけ、つぶさに本人や担任に聞き取り、観察して伝えることにした。特に親が知りたいと思う情報には敏感にアンテナを立てていた。

 労力は要したが、それは特別支援教育にかかわる教員にとって、一日の中でも最も大切な仕事の一つだと意識してきた。

  果たしてそれがどう受け取られていたのかは直接聞いたことはない。

 一生懸命に、心を込めてたくさん書いても、全く読まれなかったことだってあった。

 だが、担任、担当して子どもたちのことを見つめ、私なりのしっかりと伝える姿勢だけは保護者に伝わったとは思っている。

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 毎日の記録を取ること、それは自分にとっても大切なことだと最近特に感じている。
  
 毎日少しでも自分の感じたこと、考えたことは日記に、してきたことは記録ノートに書いて残すようになった。
 
 今日はこういうことがあった。だから、今後はこうしたらいいのかもしれないと、自分のしてきたことを振り返って反省することができ、この先の未来の展望を持つことになる。
  また、良かったことがんばったこともいっぱい書いて、自分自身をほめ、自己肯定感を上げていくこともできる。


 今後は自分の一日の出来事を記録として残し、自分への連絡ノートとして、ふりかえりながら人生を歩んでいきたいと考えている。