2024 Mosel Riesling Spaetlese Trocken, Familie Steffen. Abfueller: Gebrueder Steffen GmbH. Alc. 11.0%Vol.


某高級住宅街にあるスーパーマーケットで購入。Abfueller=瓶詰め業者なので、日本酒で言うところの桶買いのワイン。畑名も村名も表記無しだが、ご丁寧にもワイン法準拠の等級表記かつ「Trocken(辛口)」表記の記載がある。でも知らない生産者かつ「Spaetlese Trockenなのにアルコール11%って?」が第一印象だったので、いつもなら食指は動かないのだが、このワインの隣に同じ地域(この生産者の所在地はTrittenheimなのでモーゼル中流域)の超有名生産者のワインが売られていたので購入決定。というのは、超有名な方のは表記が「Qualitaetswein」だけで同じくアルコール11%、店のポップには「半辛口」とか紹介されているという、全く物凄い対比を成していたためである。俄然比較したくなって両者の、というか首記のワインもついでに購入に至った。お値段は勿論超有名さんの方が高いけれども、差額はそこそこと呼べる範囲ではあった。偶然だと思うけど、狙って仕入れていたのなら脱帽である。
まずは有名でなく桶買いでついでの購入の首記のワインの方から開けた。字面に滲む通りに全く期待していなかったのだけれども、これが中々良かったのであった。抜栓当初は色味も香りも薄く、金属的な冷たい酸味がちょっと舌に残るだけで水っぽく、やっぱりね、の感じ。しかし5分も経つと開いてきて、味も香りも李や杏や林檎の青い果実の印象が全面に現れてきた。冷たい酸味の金属的な風味も強くなったが青い果実と良い相性で、これらが1本飲み終わるまでずっと続いた。食事の邪魔には全然ならない程度の若干の残糖感も良い案配にバランスされていたように思う。このワインを発掘したバイヤーは凄腕だけど大胆な方なんだろうなとも思った。
モーゼルのリースリングは飲んだ経験がさほど無いが、金属的な印象の風味はこの産地特有だったんじゃなかったかな。モーゼルとその支流の産地は私がドイツに住んでた頃は甘口メインだった。当時の冷涼な気候による鋭い酸味と、この地方特有の土壌由来らしき独特の風味の組み合わせのため、残糖度が高くないと飲み辛いワインになっていたような気がするし、実際にその手のストイックなワインに遭遇したこともあった。甘さは優しさに通じていたんだなと思う。近年は温暖化の影響でモーゼルでも収穫時に糖度の高いブドウが採れるらしく、辛口も珍しく無くなったようだ。大雑把だが、ブドウが熟すれば酸は糖に転換されるため、鋭い酸味が緩和されて飲みにくさも緩和されるのかと勝手に想像する。
つらつら書いたついでに。ドイツワイン法に則った古式ゆかしいラベル表記は、やはり親切なのだと思う。「Riesling Spaetlese Trocken Alc. 11.0 %Vol」これだけで、どれ程の情報が得られることか。果汁糖度がその等級を名乗れるほど上がるまで熟したブドウから辛口に醸したワインでちょっと残糖あるかも、くらいはすぐに読み取れる。晩御飯のメニューがそれだけで決められるくらい有用だ。ワイン入門を謳う情報源では往々にして、このラベル表記が消費者にとって解りづらく混乱の原因になって不親切という非難を掲載しているが、真逆じゃないのか。そもそもあのラベル表記は消費者のためであって、生産者の方が止めたがっている(いた)んじゃないか?まだ開けていないがもう一方の表記は「Riesling Qualitaetswein Alc. 11.0 %Vol.」なのだが、どんなワインかわかるだろうか?少なくとも私は、この表記だけ見て夕食のメニューを決めるのは不可能である。まあ、近いうちにこっちも飲みますけれども。