一生懸命生きて働いて子供を育て

そして年老いた時

ふと振り返ると

今度は、子供達が一生懸命働いて子供を育てている。

そんな姿に安心し静かに眼を閉じるのだろうか…

人生の最期に

側にいてくれるのは誰なんだろう。

どこで最期を迎えるんだろう。

病院?

施設?

我が家?





介護の仕事を始めて四年半。

「最期まで、ここでお世話になりたい。」

「放り出された…家に帰りたい。」

「こんな事させて…ごめんね。」

「娘家族には迷惑かけられへんから…」

「一人でも構わんから、家でのんびり暮らしたい。」

入居者の方々から、ぽろぽろと零れ落ちる言葉。

切ない。

瞳の奥が悲しい。




五年前に

「家で死にたい」

と言った母。

仕事を辞め、自宅介護で看取る事を決意した。

その半年後に巡り合えたこの仕事。

母が導いてくれたんだ…と、今でも感じる。

あれから五年。

また決意する時が来た。

認知症を発症し、皮膚癌に侵された父。

この夏頃から少しずつ食が細くなり
二週間ほど前からは、立つ事歩く事が困難になってきた。

リンパに飛んだ脇の腫瘍は、野球ボールくらいになり
滲出液がダラダラと出てくる。

手術した手の甲にも再発してきた。

三日前、主治医の先生が仰った。

『緩和ケアに入っていきましょう』

緩和ケア病棟に入るのか
自宅での緩和ケアにするのか

私にすれば、どちらを選択するかの決意ではなく

仕事をしながら自宅での緩和ケアをする決意なんだ。



家族に話した。

母の時の記憶がまだ鮮明に残ってる私達家族。

反対する者はいない。

ありがとう。
本当に感謝しかない。




さぁ!動こう。

ベッドを介護しやすい部屋に移動させ
ポータブルトイレを置き

母の時にお世話になったホームホスピスに相談した。

応対して下さった看護師さんの言葉に安心し
無理せずに頑張れる気がした。



一生懸命働いて育ててくれた父の最期を
しっかりと見送りたい。

ただそれだけ。


命は、何歳であろうと輝いている。