3月も終盤に差し掛かっている。 今日は、日差しも暖かい日だった。 私が人待ちをしている前を、学校帰りの小学生たちが通り過ぎていく。 しかし、今日は、やたらとあいさつをされたり、話しかけられたりした。 終業式で、子供たちも開放的になっているのか、暖かな日に気も緩んだ私が話しかけやすそうな雰囲気だったのか。 一番印象的だったのが、ニコニコしたまま私をじーっと見ていた黄色い帽子の一年生の男の子。 おそらく一分以上はそのニコニコで私を見ていたので、つい私もつられて笑い顔になった。 「どうしたの?」と彼に聞くと、「人生は生きているだけで素晴らしいんだな」と哲学めいたことを言った。 私は戸惑った。 頭の中では「えっ? えっ? いや、人生って言っても、どう見ても小学校一年生じゃん? 6歳じゃん? 6歳で人生って。 もしかして、私が諭されているのか? 試されているのか? いや、反論はしない。 人生は生きているだけで素晴らしい、まったくその通りではないか。 で、私はどう答えればいいんだ? …落ち着け、私。 何か質問されているわけではない。 とりあえずは、同意だ。 そうだね、って同意するんだ。 なんだ、そういうことか。 黄色い帽子の一年生に突拍子もないことを言われたから、オジサン動揺しちゃったよ」と、同意の「そうだね」の「そ」を言い出そうとした時、すでに彼は離れたところにいた。 「人生は生きているだけで素晴らしい」 たった6回の春夏秋冬で、彼は人生の素晴らしさをかみしめている。 7年目も、8年目も、それからもずっと、その笑顔が続きますように、となんとなく、まだ小さな彼の背中に願った。
(画像: 黄色い通学帽のイラスト(ハット) via かわいいフリー素材集いらすとや)
