※主にサマル異説の色んな平行世界での主人公ズの様子。メインストーリーには関係してこない読み切りSS集です。

一部、サマル異説のメイン世界(17-285-E121)の様子も含みます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

裁かれなければならないのは誰か。

裁く権利を持つのは誰か。

 

死に値する罪とは何か。

生き続けるという拷問に値する過失とは何か。

 

それを知った時、俺はきっと、自分が何を望んでいたかを理解するのだろう。

成し遂げようとしていたことが、いかに無意味だったかを理解するのだろう。

自分自身がどれほど愚かで、哀れで、醜い存在であるかを理解するのだろう。

 

目くらましの太陽が消えた時、そこには蝋燭の灯ほどの光すら残っていなかったということを、思い出すのだろう。

……この手に戻ってくるものなど何もないということを、思い出すのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

___031-454-B188の場合

 

 

 

 

 

「なー、ソロー」

 

「…なんだ」

 

「髪の毛さわってもいい?」

 

「…ああ」

 

「……」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「……キレーだな……」

 

「…満足か?」

 

「…ん。もうちょっと…」

 

「……はぁ……」

 

「…。…なあ、この首んとこの傷って…火傷?」

 

「…………」

 

「…ソロ?」

 

「……さあ、覚えてないな。自分じゃ見えない位置にある。知らないうちにできた傷なんだろう」

 

「ふーん…」

 

「……。まだか? 読書に集中したいんだが」

 

「いいじゃん、そのまま読んでれば。オレのことは気にしなくていいからさ」

 

「気になるから言ってるんだ」

 

「ハハ、それもそうか。…何の本、読んでんだ?」

 

「何でもいいだろ。少なくともお前には面白くもない内容だろうよ」

 

「へー。本読むの好き?」

 

「…まあ、嫌いじゃない」

 

「子供の頃から?」

 

「ああ」

 

「そっか、そんな感じに見えるもんな。オレはどっちかっつーと外で遊び回るのが好きだったなー。かなり小さい頃に妹とよく隠れんぼしてたの覚えてるよ。いっつもオレがオニだった」

 

「…そうか」

 

「ソロは兄弟とかいたのか?」

 

「いない」

 

「それじゃ、ずっと一人だった?」

 

「……いいや」

 

「両親はちゃんといたんだっけか。でも、同年代の遊び相手はいなかったってことか? それで本ばっかり読んでた?」

 

「別に、そんなことはない」

 

「…ふーん。……じゃあ、彼女とかいる? お前カッコいいし、すげーモテそうじゃん。きっと選び放題…」

 

「いない。欲しくもない」

 

「…あ、そう…。……でもさ、仲良い子くらいいるだろ? 友達いないわけじゃないんだったら。…あと、お前って普段からそんな感じ? もうちょい笑うとか、愛想良くすればもっと…」

 

「なんでそんなに俺に構う? 何か聞き出したいことでもあるのか?」

 

「……いや別に、これと言ってねーけど。…何か目的がないと喋っちゃダメなのかよ? オレ達、仲間じゃんか。フツーに仲良くなりたいって思っちゃダメか?」

 

「……。仲良くなってどうしたい? 数十日後には消え去る関係だ」

 

「…まぁ、そうだけどさ…記憶には残るだろ。てか逆に、数十日間一緒にいるのにお互いずっとだんまりじゃ気まずいじゃん?」

 

「俺はそれでいい」

 

「えー…。……まぁ、お前がそう言うなら、無理に話しかけはしないけどさ……」

 

「……。…嫌なわけじゃない。お前が後悔しないのなら、好きにすればいい」

 

「…後悔? どういう意味だ、それ?」

 

「何でもない、気にするな。…笑うのも愛想良くするのも得意じゃないが、それで良ければ暇潰しの相手くらいにはなる」

 

「…。サンキュ」

 

 

 

 

 

 

「幼馴染…か。まあ兄弟みたいなもんで、大差はないよな」

 

「そうかもな。確かに、物心つく前からずっと一緒だった。家族みたいなものだったと思う」

 

「へー、そうなのか。んー……当ててみていい? その子、女の子だろ? 年上の」

 

「…………」

 

「違った?」

 

「…いや、合ってる。よくわかったな」

 

「へへ。いろいろ観察すると、そういうの結構わかるんだぜ。付き合ったりとかはしてねーの? 仲は良いんだろ?」

 

「……死んだ」

 

「…え?」


「彼女は死んだよ。俺を守るために」

 

「…、っ……」

 

「育ててくれた両親も死んだ。子供の頃から剣や魔法を教えてくれてた先生たちも死んだ。みんな殺された。俺は連れ去られ、拷問された。

でも最後には、俺がそいつを殺してやった。…誰も帰っては来ないがな」

 

「…………。……ごめん。……その、オレ…まさかそんな風に、…思ってなくて…」

 

「……想像通りの顔するな…。謝らなくていい。…こうなるのがわかってたから話したくなかっただけなんだ」

 

「……ソロ、ほんとにごめん。オレ…」

 

「いいって言ってるだろう。……隠し通したければ出来たし、嘘を言ってもよかった。そうしないのはお前だからだよ、レック」

 

「…………」

 

 

 

 

 

 

「……ゲームに乗る……?」

 

「ああ。アベルにはもう話してある。このあいだ会ったロトの勇者とかいう奴らも、自分達の血族じゃない勇者を消すために戦いを起こすつもりでいるようだ。連中を率いてるロト本人がそう宣言したらしい」

 

「そんな、…嘘だろ…。…あ、あいつ、最初に会った時はそんな…」

 

「みんながみんな、お前みたいに正直なわけじゃない。口に出す言葉と本心が一致してるとは限らないさ」

 

「……でも、全然そんなこと考えてるようには…見えなかったのに」

 

「…奴はそういう人間なんだろうよ。……レック。戦争が始まる。お前も覚悟を決めろ」

 

「…………」

 

「……。…この際だから言うが、俺は初めからゲームに乗るつもりでいた。例え俺以外の全員が平和を望んで結託したとしても、俺は一人で皆殺しにするつもりでいた」

 

「……」

 

「もし奴らが宣戦布告しなかったのならレック、最初に死んでいたのはお前だ。俺の一番近くにいて、一番俺に敵意を持っていない奴だからな…」

 

「……そっか。……だから最初、あんなに冷たかったんだな」

 

「ああ、そうさ。どうせ殺す奴と馴れ合っても仕方がないだろう?」

 

「……」

 

「……。…だから、後悔するなと言ったんだ」

 

「……なあ、お前は何を願うんだ?」

 

「…失くしたものを、全て蘇らせる。何もかもを元通りに。そして俺は死ぬ。俺は、初めからいなかったことにする。それが願いだ」

 

「……そうか……」

 

「まぁ、お前も一応決めておけよ。何も思い浮かばないなら俺とアベルからは離れろ。ロトの勇者にも近付かない方がいい。でなければ、俺がお前を殺す」

 

「…………願いなら…ある。いま決めた」

 

「…ほう?」

 

「……オレは……ソロのために戦うよ。お前が願いを叶えられるように、お前と一緒に戦う。お前の邪魔をするヤツは、オレが排除する」

 

「…………。……本気か?」

 

「ああ」

 

「……意外な答えだな。想定外だ。まぁせいぜい、寝首をかかれないよう気を付けるとするか」

 

「そんな心配しなくていい。…オレは本当に、お前のために戦いたいんだ」

 

「……なるほど。イカれてるのは俺だけじゃないようだ。安心したよ。

 …俺のために、死んでくれるんだな?」

 

「…ああ。だからその時までは、お前と仲間でいさせてくれ」

 

 

 

 

 

 

「ッ……んっ‥…」

 

「はぁっ……。…ソロ……」

 

「あ、っ…は…。……なに、泣きそうな顔してるんだ……」

 

「……ッ…つらく、ないか……?」

 

「…平気だ。お前の方こそ、もう…限界なんじゃ、ないのか…?」

 

「ん、く…。…そう…かも。でもオレ、どうしても……」

 

「っ…いいさ。気持ちは…わからないでもない」

 

「…。なあ、本当にいいのか? このまま……」

 

「ああ…好きにしろ…。お前で上書きされるなら、それもいい……」

 

「…………それって、さ……やっぱり、どうしたって言葉には出来ないようなこと、されたんだよな……?」

 

「…そうでもないさ。シンシアや、父さんや母さんの亡骸の目の前で…みんなが腐ってぐちゃぐちゃの肉塊になるまで、犯され続けただけで…」

 

「……っ」

 

「…あの臭い。ただただ酷かったな…あれは…。人の肉が腐敗していく臭い。そのせいか知らんが、途中からはヤツ本人じゃなく配下の魔物たちになってたな…。勇者をどれだけ手酷く辱められるか、そんなことで競争していやがった」

 

「……、…もういい…」

 

「腹の中に種を出されまくって、苦しくて…もともと入ってたもの全部吐いたんだ。そうしたら、持たないだろうからって父さんの肉を口に押し込められた…。

 動けなくなってからは、両腕を切り落とされて……」

 

「もういいっ! …もう…いいから…。…やめてくれ……」

 

「……。…泣くな。悪かったよ……」

 

「…ッ…。……ソロ……」

 

「……」

 

「絶対……助けるから……。何があっても、どんな手を使ってでも……オレが、お前を救って見せるから……っ」

 

「……苦しいっての…。…さあ、続けてくれ。気分が冷めちまうだろ……」

 

「ソロ…。…オレ…、オレは……」

 

「……。馬鹿な奴だな、お前も…。…ほら、早く…もっと。…忘れさせてくれよ…」

 

「……っ…ああ…。わかってる。…わかってる……」

 

 

 

 

 

 

 

「……ふぅーん。本当にそれでいいんだね? 後から変更とか効かないよ?」

 

「しないさ。これが、俺の願いだからな。叶えてくれるんだろ?」

 

「それはもちろん。…うーん、やっぱり君たちは難解な存在だなあ。せっかく自分の力で勝ったのに、もう生きてもいない他人の願いを優先するなんてね……」

 

「……お前らには、理解出来ないだろうな」

 

「まっ、いいさ。とにかくこれでゲームは決着だ。

 おめでとう、天空の勇者ソロ。君の祈りは奇跡に変換された。…さあ、これで自由の身だよ…と言いたいところだけど、この場合そうはならないんだよねぇ」

 

「わかってる。俺はここに残るから放っておけ」

 

「いいのかい? この世界はもうじき消滅するよ?」

 

「だろうな。…いいんだよ、それで」

 

「ああ、そう。ならお好きにどうぞ。じゃあね~!」

 

 

 

「…………」

 

「……不快な野郎だ……反吐が出る」

 

「あれで破壊神か。笑える話だ。……そう思うだろ?」

 

「…………なあ。レック……」

 

「……終わったよ。これで全部」

 

「…………」

 

「…すまなかった…。最後の最後で…お前を裏切ることになった」

 

「…許してくれなくていい。でもお前は必ず、幸せになってくれ」

 

「……」

 

「……後悔したのは、俺の方だったみたいだな……」

 

「……」

 

「………」

 

「………父さん、母さん。…シンシア。……今、行くよ……」

 

 

―――――――――――

――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分が何を求めてるのかわからなかった。

 

明確に気に入らないものもなければ、とりわけ欲しいものもなかった。

心の底から嫌いな人間もいなければ、はっきり好きだと言える人間もいなかった。

 

ただなんとなく、毎日が漠然と退屈で、窮屈で、落ち着かない。

何かが足りない。何なのかはわからない、それでも確かに何かが欠けた日々。

 

自分で選んだ道だと胸を張れるほどでもなく、かと言って強制されたのかと問われればそれも違う。

 

オレは自分が手に入れたものと、手放したものの本当の価値をわかってたんだろうか?

 

 

 

 

 

 

___04-5063-G1224の場合

 

 

 

「……おい。…おい、こら」

 

「んー……」

 

「はぁ……呑気なもんだな。そんな格好で寝てると風邪を引くぞ。ほら」

 

「…んぁ、ありがと……くぅー……」

 

「全く。王子様ってのも考え物だな、その有様じゃ。自分で出来てたことも出来なくなるんじゃないのか」

 

「……。…だいじょぶ、たぶん……」

 

「……俺は下にいる。起きたら一声かけに来い、アベルと3人で話したいことがある」

 

「ん……。…ソロ」

 

「…なんだ?」

 

「……お前さ……このゲームってのに、乗るつもりあんのか?」

 

「…………」

 

「皆殺しにしないといけないんだろ?…アベルも、…オレも……殺すのか?」

 

「…何を馬鹿なこと言ってる。そんなことが許されるわけがないだろう。寝ぼけてるだけなら俺はもう戻るぞ」

 

「待ってくれよ」

 

「……」

 

「…許されるなら、やるのか?」

 

「…………いいや。例え神が許しても、俺自身が俺を許さない」

 

「……そっか」

 

「聞きたいことはそれだけか」

 

「…ん。……なぁソロ、オレさ……」

 

「……。…何だよ」

 

「……ごめん、やっぱ何でもないわ……」

 

「…はぁ。…惰眠を貪るのもほどほどにしておけよ……」

 

 

 

 

 

 

「……」

 

「………ソロ?」

 

「……」

 

「…何してんだ? 大丈夫か?」

 

「別に何もしてない。少し疲れたんでボーっとしてただけさ」

 

「ホントだ、顔色悪いな。こっちの世界来てからちゃんと寝てるか?」

 

「心配いらない。…お前こそ、ここ数日間で口数が減ったな」

 

「そう……かもな。……最初のうちは混乱がデカくて忘れてたけど、だんだん…オレの世界のこと、気になってきてさ」

 

「……」

 

「…もし、このまま帰れなかったらと思うと…。……怖いんだ。考えないようにしてもやっぱ、不安でさ」

 

「…悪いことじゃないだろう。お前には帰る場所があり、待っていてくれる人が大勢いる。お前が自力で勝ち取った幸せだ。失うのが怖いのは、当然のことなんじゃないのか」

 

「……いや、そーじゃなくて……どっちかっつーとさ……」

 

「…?」

 

「…オレがもし二度と戻らなかったら……きっとそれは、オレの意思だったってことになると思うんだ。“逃げた”って思われる。一度ならず二度までも、自分の使命から逃げ出したと思われる……それが怖いんだ」

 

「……何だ、それ」

 

「もしオレが戻らなかったら、レイドックは大変なことになる。両親を悲しませるだろうし、城の奴らにはとんでもない迷惑がかかる。民衆にも不安を植え付けることになる。でもそれは全部、オレがすることなんだ」

 

「…………」

 

「そういうことに、なっちまうだろ? …オレはもう、誰にも迷惑かけたくないし…誰も悲しませたくないし、悲しみたくもないのに……」

 

「……相当疲れてるようだな。もう休んだらどうだ?」

 

「…まだ眠くねえ」

 

「だったら、茶でも飲むか?」

 

「…ん…うん」

 

「…………。……そう考えると、俺の方は気楽でいいかもな。迷惑をかける相手も、悲しませる相手もいない。…いや、一応いるにはいるが…向こうには俺の安否を確認する手段がないと来てる」

 

「…ごめん、無神経だったよな。気ィ悪くしたなら…」

 

「いや、そうじゃない。ただの率直な感想だ。…だが…記憶が戻らないことに関して俺がしてやれることは何もないし、その努力はお前の役目だ。無関係の人間に泣き言垂れるより、両親と打ち解ける方法でも考えてみたらどうだ」

 

「……。そうだよな。うん、オレもそう思う。……んぐっ、何だコレ! 苦ぇ!」

 

「そうか? ああ、茶葉が少し多かったかもな」

 

「いや、少しってレベルじゃねえって! お前茶ぁ淹れたことねーの?」

 

「湯で煮だせばいいんだろ?」


「まぁ確かにそーだけど、やり方ってもんが…てか、お前自分の全っ然飲む気ないとこに置いてね!? わざとかよ!?」

 

「まさか。うっかり自分の分を忘れただけだ」

 

「いやおかしーだろっ」

 

「……ふっ」

 

「…。…何だよ?」

 

「やっぱりお前は、騒がしい方がいいな」

 

「…………」

 

 

 

 

 

 

「………。……なあソロ、オレ……」

 

「……」

 

「…オレさ…どうしたらいいかわかんねえ。……戦いを望むのは間違ってるし、自分のために誰かの命を奪うなんて論外だってことはわかってる」

 

「…ああ、そうだな」

 

「オレがしたいのは、たぶんそんなんじゃなくてさ。……ただ、あの城に帰りたくないだけなんだ。オレのじゃない記憶ばっか散らばってて、それなのに周りはいつまで経っても“知らない人”のままだ。
 つうか、子供が首斬られんの見ながらメシなんか食えるかよ……」

 

「だったら帰らなければいい。他にも生き方はある」

 

「…でもそうしたら、国どころか世界中に迷惑がかかる」

 

「そんなもの知ったことか。お前が耐えられないと感じたなら、逃げればいい。それが許されるくらいのことは成し遂げただろう?」

 

「……」

 

「……お前が俺に何を求めてるのかよくわからん。血迷ったかと思えば、いきなり神妙な顔で下らない相談を始めて。何がしたい?」

 

「……。……」

 

「ああ、それがわからなくて困ってるんだったな。生憎だが、これ以上俺から言えることは何もない」

 

「……でも、お前は……そう言うお前は、それを決して自分に許しはしないんだな」

 

「……」

 

「辛いなら逃げてもいい。望むものを手に入れてもいい。それだけの代償は払った。

そういうことだろ? でも、お前はそれを自分には適用しない」

 

「…………」

 

「オレにはそれでいいと言うのに、どうして…。…なんで自分を救うことを考えない?」

 

「……行方をくらまして周りに迷惑をかけるのと、別の世界の勇者を皆殺しにするのが同じだとでも?」

 

「……」

 

「支払う額が違いすぎる。それだけの話だ」

 

「…………もしお前がオレだったとしても…きっとお前は、逃げることを自分に許しはしない。自分一人が犠牲になる道を選ぶ……そうだろ?」

 

「…さあ。どうだかな」

 

「……ソロ……オレは……。…お前以上の人間はいないと思ってる。…お前が苦しんでることが、耐えられないんだ。…オレは……」

 

「……」

 

「……お前のためなら、きっと何でもできた……」

 

「………。……レック、今のは聞き捨てならない。恨み言のつもりか?」

 

「…そうじゃない、そうじゃないけど……」

 

「いいや、そうだ。何でもできただって? それが人殺しでも、勇者殺しでもか」

 

「……」

 

「…お前がやりたいことは、わかった。お前はただ、現実を破壊したいだけだ。気に食わないものに、無関係な者たちを巻き添えにして報復がしたいだけだ。それも、その罪の一番大きなところは自分じゃなく、他人に押し付けてな」

 

「……」

 

「お前は俺を悪者にしたいんだな? 俺だけ、ただ一人だけを。…お前は自分のためだけに、俺を救いようのない殺人者に仕立て上げたかったのか!!」

 

「……っ……。……ああ……そうだよ。……オレは帰りたくない、それだけなんだ。

 城にじゃない。あの世界にはもう帰りたくない。ただそれだけで、全く大したことじゃない」

 

「……」

 

「でもお前には…救いが必要だ。ここに呼ばれた人間の、他の誰よりも。そうだろ?

 …だから、ほんの少し考え方を変えてくれるだけでいいんだ。そしたら、オレが救ってやれる。…“オレたちみんな”が救ってやれるんだ、お前を。

 そのほんのついでとして、オレはお前のために死ねる。…こんないい話ないだろ?」

 

「……レック……」

 

「だって……そうじゃないか。親も友達もみんな殺されて、なのにその仇のために命をかけて戦って! そいつを幸せにしてやらなきゃならない! オレなんかよりよっぽど救いが必要だろう!?」

 

「……」

 

「オレは……ああ、そうだ。自分で始める勇気がないから、お前が決心するまで待とうと思った。お前がその気になったなら、きっと助けてやれると思った……」

 

「……もういい、わかった」

 

「でもそうならなかった、お前は何も願わないし誰も殺そうとはしない! 理不尽に奪われたものを取り返そうとしないで、平気な顔をしている!

 ……納得できないよ。せっかく巡って来たチャンスじゃあないか」

 

「……」

 

「君には救われる義務がある。そして僕にはそれを手助けする義務があるんだ。

 悪者になるのが怖いのなら、それは全て僕が肩代わりするよ。君はただ、僕のそばで見ていてくれればいい。それで何も、心配いらないだろう?」

 

「……」

 

「さあ、ソロ。行こう。君は救われなければならない。誰もが協力してくれる……」

 

「…………。……いいや、違う。……救いが必要なのは、お前の方だ…レック……」

 

 

 

 

 

「……終わった。…これで全部終わった…。オレ達が勝ったんだ!」

 

「……ああ」

 

「…良かった……これで良かったんだ、なぁそうだよな?」

 

「そうだな。これでやっと願いが叶う。お前のおかげだ」

 

「……。……最後の仕上げをしないとな。もう、準備できてるだろ?」

 

「ああ。………何か、伝えておきたいことあるか?」

 

「…ん…いや。悲しくなるから、そういうのはいい。ただもっと、お前と一緒にいたかった」

 

「…そうか。……剣、あんなところに放っておいていいのかよ」

 

「だってもう、いらないだろ? お前のだけで十分なんだからさ。…それに、もうあれには触りたくねえんだ」

 

「……なるほど。……それじゃあ、とっとと済ませるとしよう」

 

「……」

 

「…お別れだな、レック」

 

「……ああ」

 

「……最後に一つだけ、言っておくことがある」

 

「?」

 

「すまなかった。俺はお前を騙していた。だが、俺はこう願わずにはいられなかったんだ。許せ。

 ……お前の魂が、救われることを祈ってる」

 

「………え?」

 

「……」

 

「…おい!? 何やって…ッ!」

 

「……ぐッ……!」

 

「やめろ!! 何してんだ、やめろよ!!」

 

「…っ、……」

 

「ソロ!? お前一体、何を……な、なんで…なんで回復できない!? 魔力はまだ…」

 

「……」

 

「……マホステ? ……そんな、嘘だ、どうして」

 

「…レック」

 

「…っ」

 

「……俺は……苦しんでなんか…いないのさ。…後悔、も…誰かを恨むことも、とっくにし終わったから、な……」

 

「…何言って…」

 

「俺には……救いも、慈悲も…必要ない。…だから…レック、お前…は……」

 

「……」

 

「自分を……救え。それが、…贖罪だ……」

 

「……。……な…何言ってるんだ。わかんねえ……わかんねえよ!! 何のことだよ!?

 …クソ、クソッ…血を、そうだ血を止めないと、呪文が解けるまで…っ」

 

「……」

 

「……っ……ソロ? ……おい……」

 

「……」

 

「……そんな…なぁ頼むよ、嘘だって言ってくれ……こんなのあんまりだろ……」

 

「……」

 

「………そんな、…ソロ……。お願いだ…オレを置いてかないでくれ……!

 嫌だ……嫌だぁぁ……!」

 

「…………ふぅ。…決着、ついたみたいだね。ひい、ふう、みい……うん、全員死んでるね!

 おめでとう、勇者レック。君の勝ちだ。それじゃあさっそく願いを聞こうか」

 

「う…うぅうぅッ……うあぁぁ……」

 

「……。なんでこっちの系列はいつもこうなるかなぁ。もしもし? 大丈夫? 君が最後の一人だよ? ゲームに勝ったから願いを叶えられるんだよ~?」

 

「……るさい……うるさい! うるさい!! 黙れッ黙れ黙れえぇッ!!……っ…ぐっ……」

 

「……ん?」

 

「…………。……はぁ……。…ああ、そうか……そういうことだったんだね、ソロ。最初からそのつもりで。突然ゲームに乗ると言い出したのも、全部……」

 

「あー、びっくりした。…落ち着いた? それで、願いは?」

 

「願い? …そんなもの、もうないよ。僕の願いは奪われてしまった。……もうこの期に及んで、望むことなど何もありはしない……」

 

「ああ、そう? …まあ、それならそれでいいんだけど……仕事が減るし」

 

「なら早く消えてくれ。用は済んだんだろう?」

 

「冷たいなあ。でも確かにそうだ、もう君たちに用はないね。それじゃあごゆっくり!」

 

 

 

「…………はぁ」

 

「……ソロ。どうしてこんなことを?」

 

「……。君は僕を罰したかったのか? 自分の命を捨ててまで、他の勇者たちさえも生贄に捧げて……」

 

「…そんなにも僕が憎いか? 一体僕の何が君をそうさせた? 僕は、君さえ生き残ってくれればそれでよかった。君のために死ぬことこそ僕の願いだったのに」

 

「……」

 

「……これが…“救い”か。君はそう言うんだろう? …ふ、ふふっ…」

 

「ふ…あはっ、あはは。これを救いと言えるなら……君の生涯は幸せに満ちたものだっただろうね……」

 

「…自分を救えだって? くふっ…ふふ。……こんなことをしておいて……救われていいわけないじゃないか……」

 

「ふふっ……ひ…ははは。こんな……こんなに殺して…くっひひひっ」

 

「……僕は……。……僕は一体、何のために……。…ふ…ううっ、く…ふふ」

 

「あはははっ……ひっ、ふふ……ははは………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――お口直し――

 

 

 

___02-524-C430の場合

 

 

 

 

 

 

「……」

 

「……。……何なんだ?」

 

「いやー、別に。見てるだけ」

 

「…よくもまあ、そこまで遠慮なく人の顔をジロジロ眺められるもんだな……」

 

「ソロの顔、綺麗だからさ。なんか…ついつい見入っちゃうってか、どれだけ見てても飽きないってか……ぶっちゃけ見惚れてんだよな」

 

「……男にそんなこと言って楽しいか?」

 

「楽しい楽しい。なぁ、もっと近くで見ていい?」

 

「……。…まぁ、構わんが」

 

「やったー」

 

「……っておい、何するんだ」

 

「え? 髪の毛触ってみてーなって前から思ってたから」

 

「はぁ?」

 

「ダメ?」

 

「…いや、別に駄目じゃないが…見てわからないか? 読書中なんだ」

 

「え、なんで?」

 

「気が散る」

 

「これくらいで? ちゃんと集中して読んでれば気にならないっしょ」

 

「集中できないから言ってるんだろ。と言うか、お前がそれを言うのはおかしい」

 

「まあまあ、カタいこと言うなって」

 

「……ったく。なぜ俺が我慢しなきゃならん……」

 

「…………。綺麗な色。……ほんと、全部が綺麗だよな…お前。肌の色も、筋肉の付き方も、手の形も……瞳の色とか、すげー好き」

 

「ああ、そうかい……ん、っ」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………正気か? お前」

 

「…ごめん、つい。……あんまり綺麗だったからさ……」

 

「意味が分からん」

 

「ごめんって。…さすがに怒る?」

 

「……。馬鹿らしくてそんな気力はない」

 

「じゃ、もっかいしていい?」

 

「なんでそうなる」

 

「怒る気力ないなら今のうちにしとこうと思って。…なぁ、いい?」

 

「お前の思考回路、どうかしてるだろ」

 

「いいのかダメなのか、答えてくれよ」

 

「…………はぁ。わかったよ……」

 

「………」

 

「…するならさっさとしろ」

 

「…ん。……」

 

「……は、……」

 

「…………」

 

「………」

 

「……。……もしかして、キス…したことねーの?」

 

「…なくて悪かったな」

 

「……んー、いや、むしろ嬉しい」

 

「何なんだ本当に」

 

「だって初めてってことだろ?」

 

「腹立つな。もう寝る」

 

「えー」

 

「お前も程々にしといて休めよ。明日は砂漠地帯を調べるそうだからな」

 

「はいはーい。…つか、オレももう寝るわ」

 

「そうか、なら向こうの…」

 

「一緒に寝よーぜ」

 

「なんでだ」

 

「なんとなく」

 

「おかしいだろ」

 

「いいじゃん、一人で寝るの寂しいんだよ」

 

「何を言ってんだ、ガキじゃあるまいに」

 

「…ダメか?」

 

「……。…ああもう、わかったよ」

 

 

 

 

 

「……それでさー、朝になって執事に半ギレしながら“昨夜はお楽しみでしたね”なんてイヤミ言われちまってさ。なんか、召使いからやめさせろって文句言われたみたいで。当分枕投げ合戦は禁止処分になったなー。城に友達呼ぶのもしばらく禁止になったけどな」

 

「……ああ、そう…」

 

「……。…そうだ、公務ついでにライフコッドに顔出したらみんな喜んで、宴開かれちまってさ。たまにだからってちょっと酒飲んでみたら…」

 

「なぁお前寝る気ゼロだろ?」

 

「だってまだ眠くねーもん。ちょっと前に日が沈んだばっかだぜ?」

 

「お前のちょっとってどれ位だ。ていうか、もう少し離れろ。暑苦しい」

 

「オレ寒いぐらいなんだけど」

 

「だったら上にもっと着ろ」

 

「えー、めんどくさい。ベッド出たくない」

 

「ったく、この我が儘王子め。いいか、俺はもう寝るからな。ベラベラ喋るのは勝手だが聞いてるとは思うなよ」

 

「へへ、わかった。……お前って優しいよな、ソロ」

 

「何だいきなり……」

 

「別に、思ったから言っただけ。…オレ、お前のこと好きだなー」

 

「そりゃどうも、光栄だ。おやすみ」

 

「なあ、手繋いでいいか?」

 

「……。は?」

 

「手繋いでいい?」

 

「寝るって言ったの聞いてたか?」

 

「聞いてた。そのまま寝りゃいいじゃん」

 

「………」

 

「……ダメ?」

 

「……はぁー、全く。…ほら」

 

「…ありがと」

 

「……」

 

「……オレやっぱ、お前のこと好きだわ。…なんつーかもう、全部好き」

 

「…変わった趣味だな」

 

「よく言われる。…でもほんと、なんか…お前のためなら何でもできる気がする」

 

「…馬鹿言うな」

 

「マジだって。お前のためだったらオレ、全然自分の命捨てれる…」

 

「やめろッ!」

 

「……」

 

「…………」

 

「……ご、ごめん。…ソロ?」

 

「……」

 

「…ごめんって…なあ、オレ今なんかまずいこと言った?」

 

「……」

 

「……ソロ、なあってば。手ぇ痛えよ…だいじょぶか?」

 

「…………とは言うな」

 

「え?」

 

「そんなことは言うな。二度と。…冗談でもだ」

 

「……。わかった。絶対言わねえ」

 

「………」

 

「……なあ、震えてる」

 

「…何でもない」

 

「ほんとか?」

 

「ああ」

 

「……」

 

「いい加減、もう寝ろ」

 

「……ん。わかった。…でもさ、ソロ」

 

「……」

 

「オレは、お前のこと一人にしたりしないよ」

 

「………」

 

「……おやすみ」

 

「……ああ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがきィ

 

 

最近勉強が邪魔くさくってですね、本編もサマル異説もなかなか進みません。

でも何もしないわけにはいかない、というかできない。そんなわけでこの短編集です。

今回は64の日にちなんでこの二人のだけですが、このSS集シリーズ、おそらくいくつか追加されます。色んな主人公sの組み合わせで。

 

 

 

―今回の解説―

 

 

最初のやつ(02-524-B180の場合)

→本人が言ってた通り、ピサロに見つかりそれなりに拷問されたソロ。そして、イザとレックが完全に混ざって同化した状態のレック。レックベースだけどイザ成分がかなり強め。

ソロは精神が完全に破壊される手前で解放されたのでまだ正気度が高く、けど自暴自棄にはしっかりなってる一番迷惑な状態。自分を悪役にしようと必死なソロの言動はいつもちょっと厨二っぽい。

 

 

二つ目のやつ(04-5063-G1224の場合)

→ピサロに見つかってない、つまり原作ドラクエ4通りのソロ。そして、イザとレックの同化がうまくいかず二重人格になってしまってるレック。

このタイプのソロは地獄の苦しみを味わってはいないので、ちょっとだけユーリル寄り。つまり、頭がお花畑気味。

イザはヤバい方のイザ。ヤバくない方のイザはたぶん統合されて消えてる。

 

 

最後のやつ(089-BF-W12BFの場合)

→エンディングでマスドラがシンシアたん生き返らせてくれた場合、つまり原作のエンディングを見た目通りに解釈した場合のソロ。そして、融合がうまく行った上にイザ成分がほとんどなくなってるレック。純粋にバイ。

だいぶ心が回復してて、もはやレックに自分の境遇言わないタイプのソロ。でもやっぱりトラウマはトラウマ。レックはただのいいヤツ。

 

そして空気の読めないポンコツAI(笑)コイツはいつもこう。わざとやってます。

 

 

 

 

 

 

お粗末様でした。

 

たぶんこっからしばらくこのシリーズ。