中学校の頃にとても仲の良かった友達がいた。彼は「ナッピーさん」と呼ばれていた。放課後になると誰もいなくなった教室に数人の音楽好きな連中が集まって即興ライブの始まりだ。いつも傍に居て、俯きながら時に激しく頭を振り乱しながら聴いていたナッピーさん。

 ナッピーさんとは、別々の高校に入ってからも親しくしていた。学校をさぼっては吉祥寺の伽藍堂にしけこんでは、ガロを読みあさりながらロックやフォークを聴きまくっていた。勉強やスポーツや女の子のコトなんかどうでもよかった、いつも二人は音楽と旅の話に夢中だった。

「オレ達何処に行こうか」これから行くべき場所を探してばかりいた。

 オレがバンドを始めると、ナッピーさんはオレから離れていった。フォークギターではなく、エレキギターを持ったオレが許せなかったと、知人を通じてそう聞いた。それを知ったオレは「何故?」とは思わなかった。どこに行くべきかお互いに分かり合えたのだと、むしろ、それがとても自然だと思えた。今でも吉祥寺の街を歩いていると、ナッピーさんの声を懐かしく思い出す事がある。

「シューちゃん、何処へ行こうか」って。