勘定組に勤める浅見俊之助は、妻邦江との結婚を悔いていた。「姉が美人だった」ので、その妹だという理由だけで嫁にしたという。それが「間違いのもと」だった。


で、夜になると、染川町に出没しては、贔屓のおもんがいる店「松葉屋」で茶屋遊びが続く。


その後、俊之助は政争に巻き込まれる。


筒井家老から、おもんがいる店でかつての筆頭家老本堂修理とつながりのある商人をつきとめよという藩命が下る。俊之助はおもんの計らいで、まんまと本堂修理の相手、富商の名前を聞きだすことに成功する。


ここまでは良かった。


ところが、本堂派の剣士・遠山左門が松葉屋のおもんを斬り、続いて俊之助に果たし合いを申し込む。遠山は一刀流の使い手で、剣術にうとい俊之助が勝てる相手ではない。


しかし、俊之助は、その旨を妻の邦江に告げる。「おれは刀を振り回すのは得手ではないから、恐らく助からんだろう。こうなれば武士の意地だ。ひと太刀でも斬りつけて死ぬしかなかろう。覚悟をしておけ」と。


これを聞いた邦江は、俊之助に代わって、遠山に果たし合いを申し込む。当然、遠山は???だ。


ところが、邦江は西野道場のかつての女剣士。しかも、達人・西野鉄心から秘剣さざ波を伝えられていた。遠山は最初、邦江の申し込みを断っていたが、その話を聞くと「噂に聞いた西野道場の女剣士に会えて、光栄だ。よろしい、さざ波の秘剣を、とくと拝見させて頂こう」


いざ、闘うと、死闘が続いた…。


「邦江が右籠手を狙ってきていることは、斬り合っているうちに遠山にもわかった。だが、避け得ずに斬られた。打ちこめばその瞬間に斬られ、ひくと女はすばやく踏みこんできて、やはり籠手を打った。その攻撃は執拗をきわめた。小さな波が岩を洗い、長い年月の間に、そこに穴を穿つのに似ていた」


邦江は一刀流の剣士・遠山を秘剣さざ波で倒す。が、体はボロボロ、肩から腕から血を流していた。妻の書き置きを見て、俊之助が果たし合いをした2人のところにやってくると、ぐったりした妻に向かって名前を呼び、頬をたたいた。すると、妻は眼をあけた。傷だらけだった。


俊之助は、「これまでのことは許せ。おれの間違いだった」ときっぱりと謝る。


妻が命がけで夫を助けたんだから、そう簡単に謝れてもなぁ、と思わないでもないが、俊之助は間違いを悟ったのだから、まぁいいか。