吉村昭の最後の随筆「まわりどうろう」。


この中で『零式戦闘機』を執筆したときの話がのっていますが、その戦闘機を設計した人に取材をして書いたそうですが、

小説のゲラをその人に見てもらったところ、吉村氏が書いた内容が正確ではなく、その人は「75点です。正確ではない

ので、自分の論文をそのまま写してください」と言ったと書いてありました。


そこで、吉村氏は「あなたの論文を写すことはいたしません」ときっぱり断る。小説は論文とは違う、正確でなくてもいい、

大事なのは私の文章なのですーーと。


有名な小説家に「私の論文をそのまま写してください」と頼んだその人にとって、戦闘機を設計したその正確さがすべてで

あったのかもしれませんね。間違ったことを書かれては困ると思ったのでしょう。


でも、論文と小説は違うし、論文とルポも異なる。ルポと小説もまた違う。その辺のところが分かっていないと、つい「正確に」

と言ってしまうのかなぁーー。難しいところですが。