「クリスマスだよ、お兄ちゃん! クリスマス! クリスマス!」

病室は妹の興奮しきった嬌声で満ち、心拍計の電子音すら聞こえない。

妹の整った白い顔は時折――

「クリスマスイブなんだよ、お兄ちゃん。クリスマスの前の日だから、クリスマスイブ、あはははは」

こんなに元気に見えるのに、医者が手の尽くしようが――

「今日サンタさん来るかなあ、絶対来るよね。わたし、一年間良い子にしてたもんね。プレゼント何もらえるかなあ」

なんで、俺じゃなく――

「お兄ちゃん、あれ欲しい、あれ。この間雑誌に載ってたファー付きのブーツ」

いつも祈っていた――

「じゃなければ、カシミアのロングコート、ボーナス出たんでしょ?」

妹が無茶を言う

「……」

「わたし、サンタさん見たい!」

サンタどころか、この1年外だってろくに見れていないのに――

「サンタさんか。……どんな――」

「あー、雪降らないかなあ。ホワイトクリスマスって、ロマンチックだよねー」

妹とクリスマスデートをする想像を――

「ケーキもいっぱい食べるんだ! 苺の乗ったホールケーキでしょ、チョコケーキでしょ、ブッシュ・ド・ノエルでしょ……」


ちょwwwwwおまwwwwwwwクリスマスごときで興奮しすぎwwwwwwwwww

「病室だと、派手な飾り付け出来ないからつまんないよね。

あーあ、やっぱりクリスマスくらいは自宅で過ごしたかったな。

年末年始なんだから、一時帰宅させてくれてもいいのに」

「……」

俺は妹に涙を見られたくないので病室を出た

ケーキとプレゼント……買ってくるか。