4~5年くらい前、繁華街からちょっと離れた目立たないところにある病院の廃墟に友人二人と探検しに行ったんだ。

病院の廃墟ってなんとなく『何か』がいそうで怖い物見たさだけど。

で、いざ行ってみるとやはり怖かった。昼間だったけど怖かった。

病室とか見てみると普通にベッドがあって、布団が敷いてあって、ついさっき誰かがこのベッドで寝起きしたって感じでかけ布団がめくれた状態でホコリをかぶってたり。

手術室にも行った。

手術のときに点けるあのデッカいライト(?)が天井からぶら下ってるのが突然視界に入ったときは見た途端小さく悲鳴をあげてしまった。

なんか巨大な蜂の巣みたいで。友達には「情けねぇな」て笑われたけど。

でも、友人も俺も気持ち悪くて全身鳥肌が出てしまった場所があった。

8階のある病室なんだけど、ほかの扉が全部壊れてるか、開けっぱなしなのに、なぜかその病室だけは閉まってたんだ。不思議に思ったのは、その病室、『外から南京錠がかけてある』ってことだった。

引越した病院が何のために、しかも病室に鍵までかけて封印を?

中になんか大事な物が置いてあってソレを守るために鍵をかけてるのか?

そんな物は引っ越すときに次の建物に移してるはずだ。ここは廃墟だし。

ちょっと悪乗りした俺達は、やめときゃいいのにそのドアを開け始めたんだ。

だって興味あるでしょ?『廃墟なのに封印された部屋』なんて!

俺達は診察室にあった、パイプ椅子で鍵を叩いた。

そしたら以外にも鍵は簡単に壊れた。

錆びてたから。

バキーンッと大げさな音を立てて、鍵を壊したあと、ドキドキしながらドアを開いていった。

「死体とかだったらどうするよ?(半笑)」

「ハハ、それは無いだろ(笑)どうせ劇薬の類が放置されてんじゃねぇの」

そんな事を話しながらドアを開けてみると・・・

どちらも違ってた。死体も劇薬も無い。部屋全体が変な模様。

真中にシーツのような布。遮光性のカーテンのせいか、部屋が暗い。

薄暗くてよく分からないので友達がカーテンを開けてみたんだ。

窓の鍵も開いていたので新鮮な空気を入れるため開けてくれた。

外の光がさし込み、部屋全体が明るく照らされる。

次の瞬間俺も友人も絶句してしまった。部屋全体に・・・

『たすけて』と、ひらがな四文字で壁一面にビッシリ書かれてた。

最初、変な模様だと思ったのは大小様々な大量のこの文字の羅列だった。

で、その『たすけて』の羅列をよく見てみると、所々にとても小さな文字で『しにたくない』とか書いてあるし・・・

部屋の隅に落ちてた布(多分シーツ)指でつまんで広げてみると、得体の知れない茶色というか錆びた鉄の色というか、妙な染みが。

二人で広げてみると、ベリッとかバリッとか音を立ててくっついた布が広がった。

何の染みかは大体予想できたけど、口には出さないようにした。

あんな部屋に一秒も長く居たくないので、さっさと部屋を出ようとした。

振り返るとドアが目に入った。

ドアには『たすけて』とは別のことが書かれてた。

酷く乱れた字で。

『もうだめだここからでられないでられない(以後でられない繰り返し)』

もう、気持ち悪くて二人でさっさと廃墟から脱出したよ。

あの部屋でなにがあったんだろう・・・

その病院跡はもうないから調べろようもないけど。