子ども部屋に、毎晩のように変なモノが出た。

壁にポスターの切抜きが貼ってあって、(母の趣味)夜になって電気を消すと、ピリッピリッと言いながら、四隅のテープがはがれ始める。

はがれたテープがめくれて丸まり、その穴の中から変なモノが出てくる。

分速2~3センチ。ものすごくゆっくりで、煙に似てるけど、ねり消しのようにくっきりしていて白い。

それが気になって気になって、何時間もジーーーッと見つめていた。

深夜には片腕くらいにに大きく育ってしまう。(形は毎晩違う。変な形)

ただ、私が眠るとリセットされるようだった。

怖いので、母に「あのポスターをはがして欲しい」と頼んだけど、絶対にはがしてくれなかった。

不思議なくらいセロテープがもたないので、何重にも貼りなおして盛り上がってた。

それからうちは何度も引っ越して、当時の貸家の事は忘れていた。

18の時、気になって姉と二人で寝台特急に乗り、見に行った。

まだ建っていた。しかし奇妙で、道路も舗装され周りの家も建て代わってるのに、その貸家だけがポッカリ取り残されていた。

それを母に話すと、「実は…」と、こういう話をされた。

当時、節約したかった両親が、不動産屋に「とにかく安い物件」と頼んでそこを紹介してもらった。

不動産屋は「この貸家は、もう築数十年で、何度も取り壊そうとしてるんだが、そのたびに工事関係者が死ぬので、怖くなって放置されてる。だから月1万でどうか」と言った。

引っ越したら、壁に子供の手形が付いていて、それが血のような色だから気味が悪い。

拭いてもこすっても浮き出て来るので、ポスターでごまかしたらしい。

28の時、また様子を見に行ってみたけど、まだ残ってた。