大学生のとき、一人暮らしのアパートを引っ越すことになった。

友人数人と、電車45で分ぐらい離れた実家から姉が手伝いに来てくれたのだが、なぜか姉はデカイ荷物持参。

「?」と思いつつ作業を開始し、昼飯時。


コンビニや食べ物屋に行くのも大変な田舎のこと。

しかし俺は見栄はって、 仕出屋に寿司の出前を頼んでおいた。

友人らには大好評。

夕方前には引越し終了。

新居でひとまず落ち着いて、友人らも帰っていった。

が、最後まで残っていた姉が、例のデカイ荷物をもったまま帰ろうとする。

「引っ越し祝いか何かじゃないのか?」と問い詰めても言葉を濁すばかり。

じれったくなってむりやり荷物を奪い中身を見ると――大量のオニギリだった。

「引越しで台所も片付けてるし、みんなお昼に食べるものないだろうと思ったんだけど……。すごいお寿司とか出てきたから、出しにくくなっちゃった」

恥ずかしそうに苦笑する姉。

俺は泣きそうになった。

もちろんそのオニギリは全部ひきとって、ラップにくるんで冷凍保存し、

一週間かけて全部食べた。

最高にうまいおにぎりだった。