【皮膚の構造】

皮膚は表層から表皮、真皮、皮下組織で構成されています。


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皮膚の役割としては、身体の保護(皮膚は細菌やウイルスなどから身体を護っています)、体温調節、感覚の受容、ビタミンD前駆物質の産生、種々の分泌吸収などがあります。

表皮は上皮組織ですが、真皮以下は結合組織なので、皮膚の治癒過程は骨や靭帯、腱などとほぼ同様の経過をたどる事になります。


【創傷の治癒過程】


皮膚の損傷、連続性が途切れた状態を創傷と言います。


結合組織の治癒過程は、止血・凝固→炎症期→増殖期→成熟期→瘢痕化といった具合に進んでいきます。


順番に見ていきましょう。


1.止血・凝固

損傷直後、最初の反応は止血です。損傷した血管は収縮し、周囲の血小板が凝集して凝血塊を作る事で出血を止めようとします。

その後、凝血塊となった血小板からは様々な物質が放出され、炎症反応を起こします。


2.炎症期(受傷後3日~1週間)


血管が拡張し、血管の透過性が高くなります。

これによって細胞や物質が損傷部に流れやすくなり、その中の好中球やマクロファージなどの白血球系細胞が壊死組織や病原体を貪食、分解してくれます。


※強い血管拡張や血管透過性亢進作用をもつ炎症物質にプロスタグランジンと呼ばれるものがあります。この物質には疼痛増強作用もあり、このため炎症時には強い痛みを感じるようになります。

(湿布や痛み止めの飲み薬などは、このプロスタグランジンの産生を阻害する事で痛みを軽減しています)


3.増殖期(受傷後3日~2週間)

この時期には、様々な細胞が盛んに増殖し、血管新生、肉芽組織形成、上皮化など、壊れた組織が修復されます。


この時期に重要な働きをするのが線維芽細胞です。

この線維芽細胞がコラーゲンなどのタンパク質を合成し、損傷部を多量の基質で埋める事で、組織の連続性を取り戻します。

コラーゲンとは、真皮、骨、軟骨、靭帯、腱などを構成するタンパク質の一つで、細胞外基質の主な成分です。

コラーゲンにも構造によっていくらか種類があり、損傷後は細かくばらばらの配列のコラーゲンが多く見られますが、その後太くまとまった構造のコラーゲンに置換されていき、張力などに耐えれるようになります。


4.成熟期(受傷後約3週間~数年)

この時期には、上皮化が更に進み、創部が収縮して傷が閉じます。また、細胞外基質などのタンパク質の合成と分解が繰り返され、少しずつ元の構造に戻っていきます。

※創傷後の創部の収縮は非常に強いもので、皮膚の損傷が大きい場合、皮膚移植が行われなければ創部が大きく収縮してしまいます。
千円札に描かれている野口英世は小さい頃に手を火傷して指が手のひらにくっついてしまいました。その後大きくなってから何度か手の手術を受けていますが、その頃の医療ではまだ皮膚移植が行われていなかったため、指を手のひらから切り離す事には成功しましたが、創部の収縮によって指は曲がったままだったそうです。


5.瘢痕化
瘢痕とは、損傷後の治癒過程で元の組織にとって代わる結合組織の塊です。

瘢痕では柔軟性が乏しいために動きが悪く、また血流や知覚も低下します。これによって創傷部では美容上、また関節付近では関節拘縮といった問題をひきおこします。

創傷における張力は3週間で正常皮膚の約15%、最終的に約80%まで回復しますが、損傷部位に外見上は問題なくても、100%完全に回復するわけではありません。
しかし、損傷部位が80%回復でも、その周囲に異常なけば機能的にはそ問題なく、日常生活にも不便はありません。


抜糸の時期


頭部~体幹…7日前後

四肢(関節付近)…10~14日


切創(手術創どは皮膚欠損がないため早期に治癒する。

老人、栄養不良の場合は、少し遅らせる場合がある。小児は1~2日早くても良い。

関節部の皮膚では張力が掛かり血行も悪く、治癒過程が遅延する場合もあるため、抜糸の時期を遅らせる。



以上が皮膚の創傷における大まかな治癒過程です。


ちなみに上皮組織再生能力が最も高いとされるので、その他の損傷の場合は皮膚の創傷より遅れて治癒していくと考えていいでしょう。



【参考】


・創傷治癒に対する微弱電流の効果


直流微弱電流を流す事で、好中球やマクロファージを陽極に集め、これらの細胞が壊死組織を貪食する。また、線維芽細胞は陰極に集まり、肉芽組織を増殖させる。陰極では滲出液を微酸性にし、細菌やウイルスを不活性化する。





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