未読だった宝島「このミステリーがすごい」大賞受賞作を20作購入、コロナ休暇を利用して三日に一冊のペースで読み進んでいます。
寝る間も惜しんで一気読みした作品もあれば、気がのらず4、5日かかってやっと読了した作品も。
順番にあらすじと私見をメモしたので、少しでもご参考になれば幸甚です。

「チーム・バチスタの栄光」海棠尊(第4回大賞受賞)
TVドラマ・映画・コミック化された大ベストセラー。
現役医師が執筆したメディカルミステリーということでも話題になりました。
それだけに臨場感あふれる医療現場や、大病院内におけるヒエラルキーの確執など専門家ならではの描写は一級品。
そして圧巻は第二部。政府から出向してきた白鳥がスタッフを翻弄しつつ、パズルを解くように犯人を突き止める。
全編一気読み必至の傑作です。

「流(りゅう)」東山彰良(第1回銀賞・読者賞・第153回直木賞受賞)
台湾出身の作者が1970年代の中華民国(台湾)を舞台に描く大河ミステリー。
蒋介石率いる国民党と中国共産党との戦いを生きた祖父の不可解な死。
混沌の時代、主人公は破天荒な登場人物たちと青春を過ごしながら犯人を探し求める。
当初は聞きなれない地名や中国名が次々に登場して戸惑いますが、読み進む内に骨太で緻密な文体、壮大なスケールのストーリーに引き込まれていきます。

「果てしなき渇き」深町秋生(第3回大賞受賞)
元刑事であり警備員の藤島は、自分の娘が裏社会や政財界まで関係した、殺人も含む大規模な犯罪行為の中心人物であることを知る。
そして行方不明になった彼女を追ううち、更に彼女を中心とした内部抗争に巻き込まれ、狂気の嵐に翻弄されていく。
まず内容以前に私には苦手な文体(リズムがよくない)で疲れました。
ストーリーもあえてアヴァンギャルドに造り過ぎた感があり、最後までのめり込めない作品でした。
映画・コミック化。

「ブラックヴィーナス」城山真一(第14回大賞受賞)
株取引を題材にしたミステリーの傑作。
天才的トレーダーである女主人公は「依頼人の最も大切なもの」を報酬に、次々と巨額の株取引を成功させる。
ワトソン役は銀行の裏の姿に失望した青年だが、やがて二人は壮絶な経済バトルに巻き込まれていく。
洗練されて流麗な文体、株取引を知らない読者をも魅了するであろうストーリー展開とウィットに富んだ会話。
これも一気読み必至の傑作。

「警視庁捜査二課・郷間彩香 特命指揮官」梶永正史(第12回大賞受賞)
元警察官による銀行に立て籠もり事件発生、犯人から指揮官にと指名されたのは30代独身の女性刑事。
都市伝説といわれる秘密組織が歴史の暗部をえぐり、ヒロインと金融・政界の巨悪をあぶり出す。
キャラが際立ってウィットもあり一気に読ませる。
しかし最後のつじつま合わせが少々まだるっこしい、と思ったら原題は「真相を暴くための面倒な手続き」だそうで妙に納得。
TVドラマ化。

「パーフェクトプラン」柳原慧(第2回大賞受賞)
これも株取引を題材にしたミステリー。
「身代金ゼロ、獲得金額5億円」。一見誘拐事件と思われる案件が、実は代理母・幼児虐待・ES細胞・美容整形・投資ファンドと現代社会の様々な問題を巻き込んだ犯罪に発展していく。
大絶賛の大賞ということでしたが、自分にはストーリーが広がり過ぎて冗漫に感じ、いまひとつのめり込めなかった作品でした。

 

過去の読書日記